独占欲
※ベルゼブブの名前変更→優(ユウ)
※かなりアレ
彼はいつもワガママだ。
貴族の令嬢であり才色兼備、運動神経いや戦闘能力も高い。元々は口汚いが表面は正に紳士的、彼女ままさしく非の打ち所がない悪魔だ。
ただ一つの問題を除いては。
「べーやん、まだおっぱい大きくならへんね。」
悪気もなく悪意もなく呟かれた言葉は彼の首と共に断ち切られた。余計なことはいうな、と凄んではみるが事実は事実、それ以上は言い返すことは出来ない。
「テメエ、どこ見てやがるんだ!」
「見るもなにも視界に入るわ!真っ平らなら尚更気になるっちゅーねん!」
今は可愛らしい動物の姿をしているからわかりにくいはわかりにくい。だがアンダインの例を見れば納得…と思っている間にビチャリと汚い音と床を汚す液体。赤く染まった手と顔の血を拭うとベルゼブブはゴミを冷たく見下した。
「うるせえよ性欲悪魔が。そういうテメエもお粗末なものを股からぶら下げやがってよぉ…」
「うるさいわ!ワシのは立派じゃ!」
今度ヒィヒィ言わせたる、と下品なことを言おうものなら、危うく自慢のモノが切り落とされそうになる。
普段は気にしているわけではない、だが一度指摘されてしまえばプライドが許さない。貧乳というNGワードを仄めかしてしまったら最後、ベルゼブブの怒りはなかなか静まらないのだ。
「無駄な脂肪はつけないのだよ。」
「おっぱいが無駄やと!?わかっとらんのぉ!!それは単なる負け惜しみちゃうんか!」
「…ほう?いっちょ前に気にしてるのか?まな板ペンギン。」
突如、頭上から降ってきた声に悪魔二匹が硬直する。他の者なら佐隈すら手をかけてしまいかねない侮辱にすら言い返せない、それほどの威圧感を持つのはただ一人、芥辺だ。
「お、お疲れさまですアクタベ氏!」
「話を逸らすな。」
怯えて竦み上がるぬいぐるみ二匹をつまみ上げ机に乗せると、偉そうに足を組み座る芥辺。依頼人に向けるのとはまた違う威圧に汗や色々な液体が滝のように流れ出す。
「アザゼル。」
「な、なんですやろ。」
「やってやれ。」
「へ?」
聞き返す暇なく上がる煙、中から現れたのは角を生やしたパンの姿の悪魔。アザゼルは驚く暇などない、角を引かれてベルゼブブと至近距離で見つめ合う形とさせられただでさえ回らぬ思考が完全停止した。
「いくら格の違いがあれども、封印があれば同等以上にはなる、うまくいくかもしれん。やれ。」
「しょ、正気でっかアクタベはん…」
「き、気になるわけではないのです!ただ…」
「ただ、なんだ?」
恥ずかしそうに泳ぐ目を逃がすまいと頬を引っ付かんで自らへと向ける。小さく悲鳴をあげる暇もなく、芥辺の紅眼から必死で逃げようとベルゼブブは嘴を動かした。
「貴方が言うのなら、甘んじて三下悪魔の術でもなんなりと受けましょう…」
「オイ。ホンマ余計なこと言っとったら犯すぞ。」
吠えるアザゼルを勢いよく押しのけ芥辺は上機嫌に笑いベルゼブブを抱き上げた。
「へえ?いっちょ前に可愛いこというじゃねえか……」
いつもの指定席に座りペンギンを膝の上におく。何をするのかとドキドキしていると、いきなり胸に手を置き撫で回し始めた。
「あ、アクタベ氏!?っん…」
動物の姿でも胸は胸、さすられては甘い声が出るのは当たり前。彼の機嫌を逆なでしたくはないが、これ以上性的に触られては情欲が湧き上がるのも時間の問題。
「べーやんめっちゃエロい顔しとる……」
「クソが…っみ、見るな…っあ、あん…っ」
いつもとは違う、魔界の姿の友人と不利な動物の姿の自分。舌なめずりする姿は正に食うものと食われるもの、男二人に囲まれ拘束された状態では最早逃げ場などない。
「お前に今触れているのは俺だ。」
この男はどこまで強欲なのか。アザゼルを容赦なく蹴り飛ばすと、一層強くベルゼブブを拘束すると口角を上げた。
「結界も解いてやろうか?」
「勘弁してください……」
なら、後でゆっくり可愛がってやるよ、耳元で熱っぽく囁かれた言葉に身がすくみあがり目頭が熱くなる。恥辱か恐怖か興奮でか、泳ぐ目を見て楽しむように頬に触れる手がまた憎らしい。ベストのボタンを器用に外す手に、言動不一致だ、と訴える間もなく抗議は甘い鳴き声へと変わり果てた。
「やっぱええ感度やなあ?やっぱり処女は違うわ…」
いつもはここで首が吹き飛ぶところだが、体格さと精神状態に差がありすぎた。それに淫奔の悪魔は情欲のことになるとどれほどの執念を見せるかわかったものじゃない。早速喘ぐ嘴に入れようとする手を、芥辺が強く叩き落とした。
「おい、きたねえ手を近付けんな。性病が移る。」
「失礼やな!あんさんよりマシですわ!なあべーやん、こんなセクハラ上司なんてほっといて帰ろ帰ろ!」
アザゼルの考えなど二人にはお見通し。完全に伸びてしまったベルゼブブの腕を掴む前に腕が切断され、勢いよく血柱があがり、立ち眩みを起こした瞬間に腹に鋭い蹴りがめり込んだ。
「帰るなら一人で帰りやがれ。今日のイケニエはベルゼブブの喘ぎ声だ。テメエには最上級のイケニエだろう?ありがたく思え。」
気絶させられ魔法陣へと投げ入れられ、散々なアザゼルに同情している暇はない。未練がましい腕がに追い討ちをかけるかのように、魔法陣へと倒れ込む他人のグリモアたち。
「それと。わかっただろう?二度と俺のモノに触れんじゃねえ。」
一仕事終えた、と満足げな芥辺に最早非難の声を上げる暇すらなかった。
「なっ、な!?」
「まだテメエにはイケニエを渡していないだろう、"優"。」
芥辺が"名前"を呼ぶ時、それは行為の許可を強いる時。
退路を絶たれた今、自分に拒否権など万一にも存在しない、そんなことはわかっている。
「アンタは狡い…」
それだけではなく。
あれだけ虐めて辱めて、幻滅したら優しく愛を囁く。どれだけ離れたくとも嫌いたくとも手繰り寄せて離さない。
「今日のイケニエ、期待していいのですか……?」
+END
++++
悲惨ですね、アザゼルさん
前はアザ♀ベルやったから交代なのよ…と思ったらアクベルしかない
11.7.25
修正:10.11.15
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