横暴主人
※オリキャみたいのがいますが、気にせぬように
※後天的
何故こうなったのか。
男である自分が何故ドレスを着ているのか、何故恐怖のそのものと言っても過言ではない男のに腕を引かれているのか…思い出すのも腹ただしい。
「私が助手代理、ですか?」
いきなり喚ばれるのは慣れた。無理難題をけしかけられたらこともあった。だが今回ばかりは呆気にとられてもいいだろう。内容はこうだ。
『知人のパーティーに呼ばれたんだが、無視は許されない。"女"の"助手"がいると知って興味を持っているため佐隈の代わりについてこい。』
今回佐隈がいけない理由はアザゼルに似たタイプだから危険とのこと。"女性同伴"にベルゼブブは青ざめた。
「嫌ですよ!ワタシは嫌ですからね!アザゼル君も足と角さえ消えたら人間ですってホラ!」
アンダインは、力を行使されても変な奴に惚れられても面倒。それに丁度手の放せないことがあるらしいためこれないらしい。
「お前に拒否権はない。さくまさんが危険に晒されてもいいのか。」
ベルゼブブは佐隈に想いを寄せている一一グリモアを握られていては全て筒抜けとなるのは必然。未だにアザゼルで手一杯な佐隈はまだ知らないことだが、芥辺にしっかりと弱みとして握られてしまっている。
「だったらおとなしくくるんだな。後でまた呼び出す…準備だけしてこい。」
芥辺の口元が愉快そうにつり上がった。
数分後。
再びベルゼブブは事務所の秘密の部屋にいた。いつもの燕尾服は脱ぎ捨て、ドレスを着用しているのは、どう見ても魔界の蝿の姫君。相変わらずクセのあるブロンドの髪を垂らし眠そうな目で警戒している姿は、さながら威嚇している小動物にしか見えず、悪いが可愛い以外に思えない。感嘆の声と、品定めするよな芥辺の視線は飽きたように逸らされ、背中から優(ユウ)と名乗れ、と言葉を投げかけられた。
そこからはちゃんとした記憶がない。気がついたら会場までつれてこられて今に至るのである。
異様に集まる視線。元よりベルゼブブ自身が美形と自負しているため気にはしないが、如何せん今の視線には反吐が出るようなものしかない。
(発情した雄が…)
「離れるな。」
それに気付いたのか芥辺も早歩きとなり人気のないところを目指す。なんのためにこんなところに来たのかわからない、だが喧騒を嫌う芥辺がわざわざくるとなれば相当のことだろう。
「さあ仕事だ。」
「仕事?知人に会うだけではないのですか?」
「この中に悪魔使いがいるらしい。ついでにグリモアを奪う。」
なるほど、ただでは動かない芥辺が動くということは何か裏があるとは思った。確かに、同族の気配を感じる。気配探りに気を集中させていたら、芥辺に呼ばれた気がした。
(これは、なかなか上位の悪魔ですね)
アザゼルとは格が違う、どちらかと言うとベルゼブブに近いランクの悪魔の気配とまでは感じとった。
あとは場所を補則しよう、とした時にやっと気がついた。
芥辺の姿がない。人の中に隠れてしまったし彼の代名詞ともいえる黒など嫌というほど見える。完全に見失った。別に子供ではないし仕事内容も聞いた。その問題はないのだが、問題は周りの視線。邪魔者がいなくなったと言わんばかりの男共の視線が。
「こんにちは、お嬢さん?」
きた。睨むだけで退いてくれるなら苦労はない、だが精一杯の努力はするべきだ。
「やれやれ、君のような不躾な者はお呼びではないが。」
「そんなことを言わずに、さあ。」
紳士的な笑みの奥に何を飼っているのか。明らかに色を含んだ目に失笑をうかべた。
どうあしらおう、そう思案していると彼の肩越しから顔を出した、人間界にいるはずのない二足歩行の動物。
(悪魔…そうか、コイツが…)
目標の悪魔使いが向こうから現れたとはなんと間抜けで幸運なことか。探す手間が省けたというものだ。しかし可愛らしい動物の姿をされれば能力がわからない。
「やれ、アスモデウス。」
「え…う、うん…」
色欲のアスモデウス、は有名なので知ってはいる。アザゼルよりの上位淫魔であり三代欲求の一つを完全に支配するもの。しかし悪魔同士の能力の施行は不可能、ならば契約者をおとしてしまえばいい。そうすればうまくいくはず、だった。男を強制排便で撃沈させた同時にに肩に触れた手、振り返ることを許さずに目の前に翳された見覚えのないグリモアの書。
「お前、悪魔だったのか。なら話ははえぇな。」
もう一人いた。しかもグリモアを持っているということはこちらが真の契約者一一あからさまに遊びなれた若い男がグリモアを手にニヤリと笑った。
「こんなイケてる女悪魔もいんだな…グリモアはどこだ?」
嫌な笑顔に自然と歯が鳴った。芥辺がグリモアを奪われるような男だとは勿論思わないが、ベルゼブブほどの上位の魔族が人間ごときになめられ、身体目当てに欲されるのは嫌悪、というものですらない。数やグリモアのことなど構っている冷静が消え、怒りに任せ抵抗の意識を示そうとした刹那、死にそうな男の声が聞こえた。
見覚えのある、いや恐怖により覚えさせられた黒いシルエットははぐれた彼で。男の鳩尾に膝蹴りをかますと追い討ちの回し蹴りで地に蹴り落とした。
「テメェ、誰のモノに触れてんだ。汚い手を退けろゴミ以下が!」
胸ぐらをつかみ上げ、失神してなお降ろす気配はない。何故にここまで感情的になるのか。不思議な面もちで凝視していると体が宙に浮いた。
「神代(カミシロ)、依頼完了だ。あとは任せた。」
「オイ、芥辺ぇ!」
ああ、今の男が今回の依頼主か。そう理解は出来たが顔を見ることも上げることも出来ない。
顔が熱い、周りの視線が痛い。
「テメェもテメェだ。…何油断してやがる。」
「それは、少し読みが浅かっただけですよ。」
「これだから嫌だったんだ、お前を連れてくるのはな。」
そこまで言うなら何故自分を選んだ、聞きたくとも聞けるはずはない。俯けば額を鷲掴みにされ無理矢理顔を上げさせられた。痛い、涙目になるほど痛い。
「勘違いしているな。」
「な、にがですか……っ」
「お前は予想外に目立ちすぎた。…他の男を追い払うのが面倒だから嫌なんだ。」
額に口付けを落とし、涙を拭う仕草をしたのは本当にあの芥辺なのだろうか。あまりのことに目蓋をひきつらせていると、邪気の抜けた顔で微笑まれた。
「こういう理由でもつけなきゃテメェは俺についつきてはくれないだろ…?それに、」
女の姿だと、こう密着しやすいしな、耳元で囁く顔は佐隈に見せる時と同じ顔だった。
+END
++++
せっかくという性転換出来る持論(笑)が出来たのでやりたかっただけー(・ω・)
これが一番酷い出来だった
11.7.18
修正:11.10.15
[ 123/174 ][*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]