よんアザ | ナノ



愛情表現


※表現がアレ?


次期魔王、ベルゼブブ一一一

学生時代から彼女は有名だった。貴族の名に恥じぬ気品と能力、容姿端麗、才色兼備とくれば自然と視線を集めるのはわかりきっているだろう。

「べーやん。」

嬉しそうにカレーを貪っていたペンギンがくるりと振り返る。せわしなく咀嚼している嘴を見ればアザゼルの話より食事を優先したいのであろう、目が煩わしそうにいつもより細くなる。

「なんですか。君にくれてやるカレーはありませんよ穀潰し。」

「酷いわぁ…せめてあーんってしてくれてもええやんって嘘嘘!!ジョーダンやんかー!!」

スプーンを行儀悪く突き刺し、手と目が光を帯び始めたことに慌ててアザゼルはソファの裏へと逃げ出した。
情けないかもしれないが、追っ手がこなかったために結果オーライだろう、またスプーンを手にしたベルゼブブにとってアザゼルは興味の範疇外である。
いつも一緒にいた。
彼女の性癖も趣向も知っている。
幼いころはよく魔界でバカをやったものだ。
高校に入る時に別れて依頼は疎遠であったがあの時のことは忘れたことがない。楽しく充実したあの日を、彼女の楽しそうな笑顔を。

「べーやーん。」

「気持ち悪いなテメェ。猫なで声を出すな。」

一番仲がよかったと自負をしている。他の悪魔たちの嫉妬を買ったのも覚えている。育みつつある、職能の淫欲の中に潜むこの感情の名前も知っている。

「今度遊びにけえへん?」

「嫌です。君の部屋は穢らわしいものしかないし、私に手をだそうなんざ100年早いわこのヤリチ●悪魔が!!」

カレーを飛ばさん勢いでまくし立てられても怯むアザゼルではない。
淫魔にあるまじき我慢をしてきたのだ。久々の対面を交わしてから、ずっと。本人を汚そうものなら返り討ちは必須であるし、妄想から得られる快楽も言動がある。

(べーやん、)

好き、好きだった、大好きだ。
かき抱いて舌を絡ませて、押し倒して鳴かせてよがらせて繋がりたい。いつからこんな想いを抱いていただろうか、遡る必要もない。
伝えても満足な答えは返らない。職能以外にはつくづく無関心で自分の欲望だけに従順な彼らである。ベルゼブブの職能は暴露一一強制便意。暴食の名に恥じぬよう食への興味(排泄物ではあるが)であるのと違い、アザゼルは淫奔、性欲。三下悪魔と上位悪魔としての溝は計り知れない。
ならばせめて美しい人に近づき、姿だけでも目に焼き付け穢してやろう、という思想へといきついた。
溝が音を立てて深まる。

「アザゼル君。」

いつまでこのようなことを続けるのだろう、いつまで慣れもしない独占欲に踊らされてしるのだろう。抱いては捨て抱けないなら代わりを探しの平凡の日々はどこへ…

「散々人を呼んでおいて、慈悲深い心で構ってやろうとすれば無視かテメェ!!いつからそんなに偉くなったんだよオォ!?」

輝いた羽がアザゼルの首を宙へと打ち上げた。天井に赤い花を咲かせ床には水溜まりを作り、更にオレンジの塊を浮かべる。
相当心頭にきたらしく、跡形残さぬようにとがむしゃらに手刀を振りかざすベルゼブブが落ち着いたころには辺りは赤く染まり、運悪く入ってきた佐隈も小さく悲鳴を上げた。

「ベルゼブブさん、何やってるんですか!?」

「苦情ならアザゼル君にどうぞ。」

「ゴミは片付けろよ。」

タイミングの悪いこと悪いこと。不機嫌丸出しな芥辺に殺される…そう目を瞑ったが、気がつけば変わった目線。ソロモンリングを外された、要するに佐隈に迷惑をかけるなということで。

「ガキじゃねえんだ、片付けくらいできるよなぁ…?」

蛇に睨まれた蛙、いやもうカメレオンの皮を被ったドラゴンのようなものに狙われた蠅とでも例えようか、女性相手にも容赦のない鬼の形相に竦み上がった。

「その間は佐隈さんと上にいる。早くしろよ。」

ピギィ、と唸るがそれ以上の悪態は出てこない。渋々腰に鞭打ち立ち上がると再生を始めている頭を抱え上げた。

「ザマぁみろ!!自業自得やぞ!!」

「お黙りなさい。窓から捨てますよ。」

近くに見えるは金髪美女の小ぶりな胸。いつもなら本能のままに飛びつくのだが、いかんせん体の再生はまだだ。千載一遇のチャンスにありつけない無念さを悔やんでいると、突然スプーンを差し出された。

「なんやの。」

「せっかくのご馳走が君の汚らしい血で汚れてしまったんだ。食え。」

「ハァ!?だから自業自得ちゃうんけ!!なんでべーやんの臭い口で食べとったスプーンで貰わないかんのや!!」

「さくまさんは残さず食べないとおかわりわくれないのだよ!!黙って食え!!」

見た目によらず厳しい佐隈である。佐隈がイケニエを作ってくれなくなると芥辺からイケニエとかこつけてどんなものを押し付けられるかわかったものじゃない。ベルゼブブは必死である。
そんな心中を読んだのかアザゼルの目がいやらしく光った。

「やったら口移しや、口移しなら食べたる。それかパイズリさせてくれたらなあ…?」

期待などしない。ただ彼女の歪む顔が見たい、その一心だった。なのに、どうして、今口内にカレーの味が広がっているのだろう、なぜ柔らかいものが動き回っているのだろう、なぜこんなにも彼女が近いのだろう?

「…はっ、満足ですか…?」

挑戦的な物言いに泳ぐ目線とは、なんとアンバランスなのだろう。
あぁ、もうすぐ腕が再生を果たす。その時はその愛らしい頬でも包んでやろうか。

+END

++++
にょたにした意味がない気がした

11.7.11
修正:11.10.14

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