よんアザ | ナノ



小さな悩み

※先天的にょた
※乙女なべーやん

※過去捏造(アザゼルとベルゼブブは親しくない)


ベルゼブブ優一。魔界の貴族、有名大学卒業、魔王になる資格を持つ力…そう、"彼"は完璧な悪魔。
知恵も働き他人の心を読むこともできる彼だが、ただ一つだけ悩み事があった。そのことについて今から暴露していこうと思う。

そう。事故は、唐突に起きるものだ。

「ベルゼブブ、さん?」

「………」

見て、しまった。


………

今日は珍しく芥辺が佐隈を連れて事務所を後にした。その間にベルゼブブとアザゼルには下の事務所の留守番を頼まれた。しばらくかかる用とのことで、芥辺がベルゼブブの封印を解いたのが丁度一時間前。
用が終わり、げんなりとしながら佐隈が事務所へと足を踏み入れた時だった。
一人の、女性がいる。金髪で、見たことのある、女性が。
似ているが、"彼"なはずはない。何故なら彼は男、目の前のそっくりさんにはちゃんと小さいながら胸があるのだから。

「え、あ、お、お客様ですか…?」

そんなわけはない。
目の前の女性はカッターシャツを完全に開けている状態なのだから。
顔を赤く染め、慌てて服を正そうとするが手に持っていた包帯が絡まり、状況は更に悪化した。半分涙目になる女性が可愛い、と思ってしまうが助けてあげるのが先であろう。
なんとか前を隠すことに成功した。落ち着いた女性に名前を訪ねると、ベルゼブブ、と名乗った。ということは。

「ベルゼブブ、さん…?」

コクリと静かに首が動き、服を握る手に力が込められる。

「女性だったのですか……で、何をしてたんです?」

「アザゼル君のせいでサラシが緩んでしまい…直していたのです。」

そのアザゼルは、と言おうとして口を閉じた。壁にへばりついた血が扉まで続いている…何かを引きずったような後に、乾いた笑いしか出ない。

「さくまさん…」

「はい。」

「アザゼル君には、このことを内緒で…」

このこと?と首を傾げれば、"女体であること"だと返された。何故、女にうるさい彼は知っているのでは、と問えば、フルフルと首は横へ。

「彼とは、そこまで親しくないですから。」

「そんな、あんなに仲が良さそうなのに!」

「昔にクラスが一緒になった程度です。それに彼は誰にでもフレンドリーですし。」

そのため息はどことなく陰鬱としたもので、佐隈を納得させるには十分だった。
ベルゼブブが、アザゼルを想っていると。

「…好きなら素直になればいいじゃないですか。」

「そんな…っ!彼は胸が大きくないと女だと認めない、と…」

「またそんなバカなことを……」

沈むベルゼブブに、いやまさか、と汗が流れた。

「男装しているのは、その為…?」

じわりと溢れる涙。それがすべてを語ってくれた。引きつる佐隈の口元、それに痙攣する握り拳も語る。今度どのような制裁をあの犬へと与えようか、と。

「いいんです。たまに接点があったのみ、彼も何も言わないということは気づいてません。」

「そんな…っ」

「一緒にバカをやれるだけで幸せです。」

健気なベルゼブブの姿は正に恋する乙女。涙は不釣り合いだが、赤らんだ頬に伏せられたら睫、綻んだ口元には母性を擽られた。

「さくまさん。」

「なんですか?なんでも言ってください!」

「胸は、どうやったら大きくなります?」

その上、上目遣いなんてされてしまっては、助けてあげたくなるのは人情というもの。思わず抱きつけば、丸い目が佐隈だけを写し瞬いた。

「牛乳も豊胸も試してみましたが、ダメでした…」

「なら、マッサージはどうです?」

「マッサージ?」

「こんな風にか?」

いきなりの第三者の声と、のびてきた手。短くあがった恥辱の悲鳴と反射的な攻撃はセクハラを即座に中断させた。

「あ、アザゼル君!?そんな、顔を潰して強制送還したはず…っ!」

アザゼルが戻ってきただけではない。誠の悪魔の姿となり不死鳥の如く舞い戻ってきたのだ。

「サボったから交代だ。」

有り余る怒気を言葉として放出する芥辺が目の前を過ぎる。ポカンと口を開けている場合ではない、視界の端に映る一方的な乱闘は、佐隈には分が悪い。

「なぁべーやん?淫奔の悪魔なめとったらアカンで?性別くらいすぐ見抜けるねんからな。」

耳に生暖かいものが触れ、体が粟立つ。振り返る度胸も余裕もない。

「う、…じゃあ何で黙ってたんですか…」

「男装しよるから、気にしとるんちゃうか、と触れんかったんやで。しかしまぁ…可愛いとこ言うてくれるなぁ……」

修飾語など必要ない。上着は不要だと入り込んできた手にまた声が上がる。
聞かれていたなど、穴がどれだけ深くとも足りない。もういっそ死んでしまいたいという欲求に駆られる。

「ワシもべーやんのこと昔から好きやってんで?なぁ、付き合おうや。」

(反則だ、こんな時にきどるなんて)

甘い声を出すなんて。
昔からアザゼルは、ことあるごとにベルゼブブに構おうとする節があった。位や身分の差など気にせずに近付く彼に、畏怖や畏敬を抱いた者は数知れず。しかし努力も虚しくベルゼブブは他人に興味を示すことはなかった。
「………なら…」

「ん?」

「今のセフレ全てとわかれて、浮気しないなら。」

「え…あー………」

「渋るならいいです。諦めます。」

「わかった、わかったから!諦めんといて!!」

情けなくすがりつくアザゼルに優しい笑みを向けるベルゼブブ。憂いなどない、綺麗で安心しきった笑顔は格段と綺麗なものだった。


「アザゼルさん。」

「なんやさく?いおうてくれるんか?」

「浮気したら、叩き潰しますからね。」

「何を!?どこを!?」

悩みなんて小さいことだ。解決してしまえばどうということなんてない。
さて、小さいものが今後大きくなったかは、また別のお話し。

+END

++++
アクベルにしようと思ったけど、アザベルが少なかったので

11.10.21

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