9.その「好き」じゃない!
(アザゼル視点)
「ベルゼブブさん、好きな人いないんですか?」
「突然ですね。何か気になることでも?」
「いえ、ベルゼブブって趣味はアレですけど美形でしたし、モテるのかなぁ…って…」
「失敬な!金に汚い女に言われたくはなぁいッ!」
突然佐隈が恋愛に興味が出来たのか、と思えばこれだ。別に佐隈のことをどうこう思っているわけではないから気にはしないが、相手が問題なのだ。
だが怒りで騒ぐ小動物を見て安心した。
「でもベルゼブブさん、貴族なのでしたらお見合いがあるのでは?」
「上辺だけにしか興味のない女など、こちらから願い下げですよ。」
どうせ殆どの女などベルゼブブの家柄と容姿にしか興味がないのだから、と見下した笑みを浮かべるベルゼブブに心底安心した。彼を狙う女ないないと、彼がしばらく女に取られることもないと。
「へえー、べーやんは相変わらず硬派やのう……むこうから言うてきよるんやったら、抱くだけ抱いて捨てたったらええねん。」
女性を蔑む発言を佐隈に叱られたがそんなことをアザゼルが気にするわけがない。淫奔の悪魔に、何を今更。
「アザゼルさんは好きな人…いるわけないですよね。」
「失礼ちゃうんか!ワシは全ての女が好きや!」
「やれやれ……相変わらずの欲望の塊だな、君は。」
(べーやんは、男でも別格やけどな)
口には出せない、本当の気持ち。でも、今なら誤魔化せるかもしれない、前の話題がカモフラージュになるかもしれない。
「べーやんも好きやでーなー?」
ヘラヘラと笑ったことに対してなのか、なんなのか。彼は心底憎々しいものを見る顔となった。
(その「好き」じゃない!)
+END
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女と並べられてのイライラ
11.8.22
修正:11.10.17
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