10.えこひいき、してるのに
(ベルゼブブ視点)
今日も、窓は開けっ放し。夜風は心地よく、心を穏やかなものにしてくれる。
今日は、"彼"が来る。別に約束などしていないが、いつも満月の日には彼はやってくる。決して待っているわけじゃない、わけじゃないのに…と自分に言い聞かすが時計と窓ばかり見ているのは厳然たる事実。
「邪魔するでー」
きた、と急く心臓とぶっきらぼうに対応してしまう声帯。でも侵入者は気にした感じはなく、遠慮なしに進めてもいないソファーに身を沈めた。
「なにしにきたんですか、呼んでませんよ。」
「開いてる窓から入ってきてもええやろ。」
泥棒を准将している発言にイライラする筈、だが思わずでたのは微笑み。
(そのために開けているからな。)
「それを屁理屈、というのですよ。」
「なんやの、やったら追い出せばええやん。」
言われていることはもっとも。それでも動かない自分はそれを否定する気力がないから。
「追い出してもまた満月になればくる、ならば追い出しても無駄というやつでしょう。」
「わかっとるやんかー…って、ワシがくる日わかっとったんかい。」
「当たり前だ、バカ。」
不意打ちに驚く彼の唇に軽く口付けを一つ、羽のようなもののために止める間などなかった。
「…なんや、べーやん、そうやったんか。」
「気づくのが遅い。」
何故いつも窓を開けていると思った?
一これは毎日こないと気付かないだろう
何故いつも二人分のグラスがあると思う?
一使っていないのに、客がいたのかなど面白いことを言う
何故いつも早めに風呂に入っていたと思う?
一何を期待しているなど、言わせるな
(えこひいき、してるのに)
+END
++++
えこひい…き?
お付き合いありがとうございます
11.8.26
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