8.真面目に聞いてくれたら
(ベルゼブブ視点)
バカは死ぬまで治らない、男の嫉妬は醜い、惚れたもの負け、とはよく言ったものだ。
「聞きそびれたけどな、べーやんとルシファーはんってどんな関係なん?」
蹄のついた足を忙しなくバタつかせたアザゼルが問いてきた。聞きそびれたのはわかったが何故今このタイミングなのだ。二人きりで空気も和やかだった今に。
「ただの腐れ縁ですよ。全く…迷惑な話です。」
「ホンマに?」
何をそんなに疑うのか、しつこく彼が食い下がってきた。
「仲良かったよな?」
「どういう見方をしたらあれが仲良く見えるんですか。」
「あんなに体密着させて。」
なんのいちゃもんだこれは、いやこれはもしかして。
(嫉…妬?)
憧れのルシファーへか、それとも、もしかして、このベルゼブブに?
心臓が速くなる。
「嫌いな奴をこんな距離にまで接近は許さんやろ、普通。」
(ち、かい…っ)
互いの息が髪を掠める。少し前に出れば唇すら触れ合ってしまうであろう距離。心臓が、うるさい。
「た、ただの取っ組み合いだ!それ以上の意味などないッ」
「ほう?べーやん、顔真っ赤やで?」
からかいをこめた言い方に少し落ち着いたのは感謝しよう。しかし顔にでていたことに再び焦りが蘇る。
「目の前にいんのはワシや。忘れんなや。」
彼に浮かぶのは明らかなる嫉妬一一一しかもルシファーへの。これは期待してもいいかもしれない。
「そうです、嫌いならここまでの接近は許しませんよッ!」
(嫌いなら君の首を跳ねているッッ!)
「やったら好きなんや。」
「すっ…す、す…好き、ですよ………」
通じただろうか、自分の気持ちは。気圧され馬のりされている状態より上目遣いで様子を窺うと、至極歪んだ彼の顔が映った。
「あぁ、そうかい。」
これは確実に勘違いをしている、我に返った時には遅すぎた。彼はルシファーとベルゼブブの距離を言っており、ベルゼブブはアザゼルとの距離を言っていたのである。ということは、彼はベルゼブブがルシファーのことを好き、だと勘違いしてしまったことになる。
「アザゼル君、何か勘違いを一」
「ワシ、もう帰るわ。」
「アザゼル君!」
あぁ、何故もこううまくいかない。
(真面目に聞いてくれたら)
+END
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乙女すぎて泣ける
11.8.7
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