よんアザ | ナノ



飲まれる

※ネタ募集品


酒は飲んでも飲まれるな、他人のフリ見て自分を治せ、とはよく言ったものだ。
芥辺事務所助手の佐隈の酒乱っぷりは異常だ。少し飲んだだけでいつもの優しい風貌などなりを潜め、口は悪いわ暴言を吐くわ、一体誰に影響されたのやら。

「オラ、早く進めや下僕!」

「だから飲むなゆーたんや。畜生、目え離さんかったらワシもこんな目には…」

「ギャハハハハ!駄馬が喋るんじゃねえよ!」

ちなみに、今回アザゼルを振り回すのは佐隈ではない。おぶられ首にしがみついているのはれっきとした男。魔界の紳士ベルゼブブである。
クールな顔など今や台無し、子供のようにはしゃぎ手足を動かす彼がどうしたか、など説明も不要。

「べーやんは酒に弱いねんから飲むなゆうたのに…」

「んだとコラ。あのアマといっしょにすんなむしずがはしる。」

「呂律も回らんようなっとるやんけ。」

仕事帰りの飲み会は、絶対ベルゼブブに酒は進めない。佐隈のことを言えないほど飲み慣れてないし酔いやすい、悪酔いすることは同窓会で体験済み。お持ち帰りして襲ってやろうとしたら、隙はなく手加減のない力で斬殺惨殺され酷い目にあった。

「ホラ、ワシもう帰るからな。酒抜いてから明日きてや。」

「うっせボケ。」

「なんだよ、あっちゃんコイツに飲ませたのか?」

闇の中から響いた声。決して他人ではない響きに、呆れと安堵の息をついた。

「ルシファーはんですかいな。べーやん、怒りますで。」

「オイルシファーテメエ…」

ホラ早速、と左右に振られる首だったが、ルシファーはごく普通に様子を伺うのみだ。

「もっとこっちにきやがれぇぇぇぇぇ…」

「んだよ、ルシファー様に物を頼む時はそれ相応なる頼み方があるじゃねえか。」

「ルシファー…」

重い体を持ち上げると、座った目でルシファーへと距離をつめる。依然とした態度で動かぬルシファー。

「あっちゃん、もう帰ったほうがいいわ。あとは俺様に大船に乗ったつもりで任せろって。」

「代わりに魔界を沈めんといてほしいですわ!」

勿論そのつもりだ、と逃げ出すアザゼルなど無視もいいところだ。ユラリとルシファーの前に立ったと思ったのはしばしの間、躓いたのかグラリと体が傾いた。

「るしふぁー…」

「あーあー、ここまで酔いつぶれやがって。」

どうやら躓いたわけではなくワザとだったようだ。ルシファーに全体重を預けると、胸にすり寄る始末。焦るわけでもなく慌てるわけでもなく、ルシファーは甘える子供の頭を優しく撫でると溜め息を吐いた。

「なんでむかえにこなかったんです…」

「ケータイを切ってやがったのはお前だろうが。あっちゃんに何もされてねえか?」

「なにをされるっていうんです。」

頬を膨らまし、拗ねるベルゼブブに小さく笑った。先ほどまでのツンはどこへやら、今は機嫌のよい猫のようだ。普段ならば何か企んでいるのでは、と一応疑ってしまうのだが、酒の力は偉大である。

(酔った途端に無防備になるわ、妙におとなしくなるわ…)

「るしふぁー、なにをかんがえてるんです…」

強く髪の毛を引かれ、座りきった目で睨まれた。怖いという感情はないのだが、機嫌を悪くされるのも面白くない。

「俺はいつも俺様のことと、お前のことしか考えてねえよ。」

「ほんとうですか?」

「どうやったら信じる?」

幼い子供のように、うーんと唸りながら頭を捻る姿が可愛らしくてたまらない。普段の澄まし顔の裏にこんな可愛い小動物を飼っているとは、ペンギンの姿も納得である。

「きす、してください。」

「へえ?」

「うんと、ふかいやつ。」

ムードはあったものじゃあないが、誘いは誘い。頬に触れれば、当たり前だが熱い。目も熱でか潤んでいる。女のようにしおらしくなっていると張り合いがない、ともいうが据え膳は男の恥である。

「て、ぬいたらしょうちしませんよ。」

「腰抜かしても知らねえからな?」

顎をとり、間髪入れずに唇を塞ぐ。歯茎をなぞり舌を絡め口内を荒らし、吸っては噛み更に吸って、怒涛の刺激の嵐にベルゼブブの目から涙が溢れだした。

「んっ!もういい!!」

「やっぱり腰が抜けてるじゃねえかバーカ。」

「きみがへたくそだからですよ、ばーか!」

地面にへたり込む子供を抱え上げ、ベッドへと優しくおろすと自然と向き合う形となる。押し倒してるとも見えるこの体制、先に動くのはベルゼブブだった。

「るしふぁー。」

「ん?」

「もし、あなたがまおうになれたら、わたしの……およめさんになってくれますか?」

飲み物を口に含んでいなくてよかった。もし含んでいたら、胃液もともに吹き出していたかもしれない。

「ガキみたいな口説き文句だな。あと逆だろう逆。」

「くれますか?」

「…」

酔った勢いとはいえプロポーズはプロポーズだろう。…台詞が間違ってはいるが。

「あぁ、いいぜ。」

籍入れる時には逆転しておいてやるが、という野望を胸に額にキスをおとすと、ニッコリと笑い首へとしがみついた。綺麗な笑顔とは裏腹に、強い力で。

「だいすきですよ。」

うっかり見とれていたら最後。抱きかかえられたまま首筋にかかる息。どうやら潰れて眠ってしまったらしい、そして自分は拘束されてしまったらしい。動くと更なる力で抱きしめられてしまうし、これは別に悪い体制ではない。

(さーて、これを明日聞かせてやればどんな反応をするかな?)

後ろ手で握りしめたケータイの録音をオフにして、明日この幼い寝顔がどんな表情を浮かべるか楽しみで仕方がない。

次の朝、ベルゼブブの屋敷から耳をつんざく絶叫と暴走した蠅の王が魔界を半壊させるという事故があったとか。

+END

++++
『酔っ払って甘えん坊なベルゼブブ。さんざんデレデレした後にルシファーさんに抱きついて眠てしまう、されるがままのルシファー。(いつも暴言ばかりの口から、ルシファーさんへの実は…な本人聞いたら爆発しそうな話も)』というネタでしたが…ルシファーさん特に振り回されてませんね/(^o^)\あっれえ?←

と、とととにかくネタありがとうございます!

11.8.29
修正:11.10.14

[ 133/174 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -