よんアザ | ナノ



非日常兼、日常風景


※ネタ募集品


「なあ、あれ…」

「つっこんじゃダメですよ。」

最近の職場環境はつくづく最悪だ。

「アクタベ氏。今日は私も仕事に…」

「ダメだ。お前はここにいろ。」

「いつもこの様子では、私は何のために喚ばれたのかわかりかねます。」

「お前にはお前にしか出来ない仕事がある。」

会話だけを聞いていれば普通なのだが。

「…なんで、アイツらあんなにイチャイチャしよるねん…」





日常兼、日常風景




芥辺と見つめ合う、金髪の青年。ただ見つめ合っているだけならまだ我慢出来る。だが、"ただ見つめ合っている"ではないから我慢ならないのだ。
芥辺の膝の上に跨っている体制…要するに対面座位ながら、本人たちは全く気にしていないというこの状況。もしどちらかが恥ずかしがるや躊躇うことがあろうものなら、すかさずツッコミを入れて空気を正すことも出来るであろう。だが、ごく自然に行われてしまってはなにも言えない。
職場環境の悪さとは上司の態度ではなく部屋の清潔感でもなく、この何か吐きそうな甘い空気が原因である。

「お前はしばらく雑用を手伝え。それが仕事だ。」

「そのようなことでよろしければ。」

頬を撫でられ、猫のようにすり寄るベルゼブブ。腰を抱き寄せ撫で回す芥辺。何もおかしいことなどない、といいたげな一連の流れのどこに、いつツッコミを入れればいいのだろうか。悩むばかりだ。

「じゃあさくまさん、頼むぞ。」

「あ、ハイ!」

「くれぐれもドジを踏まないようにお願い致しますよ。」

「黙れっちゅーんじゃい…」

頼む、と言われても掃除であるためこの甘ったるい空気からは逃げられない。しばらくはまたこの空気に我慢しなくてはいけないのか、そうタカをくくった。

「では私はお茶を入れて参ります。」

きた。早速チャンスがきた!
アザゼルも気持ちは同じなようで、素早く顔を回すと芥辺から離れたベルゼブブを見送った。一度離れれば、次芥辺の元に座る瞬間にツッコミを入れることが出来る。そこで平然と爆弾発言をされるかもしれないが、そうなれば受け入れてやろうではないか。そう心に決めてベルゼブブを見守っていた。

「お待たせしました。」

悪魔が自分の得にならないことはしないのは知っている。アザゼルと佐隈の分を運んでこない、それは今の問題ではない。
いかにこの甘ったるい空気から抜け出すか、それが問題であるのだ。

「…今日はなんだ。」

「ダージリンを入れて参りました。アクタベ氏も飲まれるでしょう?」

「?カップは一つしかないようですが……」

しまった。他につっこむことが出来て肝心なことにツッコミをいれることが出来なかった。アザゼルの無言の猛攻をあしらいつつ、再び対面に腰を下ろした二人を見つめる。

「いえ、これで問題ありませんよ。」

ケロリと言ってのけ、紅茶を口に含むベルゼブブに首を傾げるばかり。意味はすぐにわかった。口に含んだ紅茶を奪うかのように芥辺が口付け深く貪り合う。雑巾とモップが落ちる音がした。

「…砂糖が足りないんじゃないのか?」

「貴方は甘いもの嫌いでしょう。」

「蜂蜜さえブチこまれないなら気にしない。」

油断していたのもあるし、再び平然と行われる行為故、ダメージはでかい。芥辺とベルゼブブの甘すぎる行動に一番堪えるのはアザゼルである。友人と鬼上司のイチャイチャ、しかも同性となればトラウマにもなるだろう。ご愁傷様である。

「茶菓子がほしいものだな。」

「フフ、そう言うと思いました。」

いつの間にか佐隈の食料庫から拝借していたハニークッキーを取り出し、一つを自らの口に放り込む。

「テメエ、蜂蜜はやめろと言っただろう…」

「私が食べたかったのです。」

悪戯が成功した子供よろしく、ケラケラ笑うベルゼブブに芥辺は皺を寄せる。だがこの程度で負けを認めるような男ではない。
目の前にある首筋に舌を這わせ、強く吸ったり歯を立てたりした悪戯で仕返し始めたのだ。

「アクタベ氏…っ」

「謝れば許してやるよ。」

しばらくは耐えられたが、我慢にも限界がある。根を上げたベルゼブブに心底愉快な笑いを浮かべ、一層強く歯を立てた。

「すぐ別のものを取って参りますから…っ」

「ちげーよ。」

「すみませんでした、ご、ご主人様…っ」

「それでいい。」

やっと感情が現れた、と思っていたら甘ったるさが増しそれどころではない。

「覚えてろよ。」

「くっ!」

悔しそうな言葉とは裏腹に、表情は嬉しそうである。今度は意味はなく深く口付け合う。

「さくちゃん…」

「はい?」

「ワシ、もう帰っていい?」

「私を一人にしないでくれません!?」

しばらく、いやここに勤務する限りこの空気は続きそうである。

+END

++++
『事務所の椅子で対面座位が日常のアクベル(ツッコミが出来ないアザゼルさんとさくちゃん)』というネタを頂きましたが…いい感じにカオスだ…←
今までの中で一番甘いのではないのでしょうか、角砂糖を吐くのではないのでしょうか。ん?こ、これはネタとして合っているのかどうか…

いろいろやってしまった気がしますが…ありがとうございます!

11.8.26
修正:11.10.15

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