よんアザ | ナノ



戸締まりには気をつけて


※ネタ募集品

互いの連絡先は知らずとも、家は覚えていた。身分の違いあれども子供の頃には仲良く暴れまわっていたし、芥辺の元で働き始めてからその関係も蘇りつつある。
――――そうなりを潜めていた感情も。

(相変わらず無駄にデカい家よのう…)

飲みに行こう、とベルゼブブと約束していたのだが今日がその約束の日当日。約束の時間となっても来ないため、迎えに来たのはいいが相変わらず気が引ける。下級悪魔は近づきたがらないこのベルゼブブの館は、遠慮や恐れを知らないアザゼルにも威圧感を与えた。

(べーやんもそろそろメアドくらい教えろっちゅーねん)

聞いたらタイミングよく仕事に呼ばれるのはが主で、その後は忘れられているという始末。佐隈に聞けば「自分で聞いてくださいよ」と言われるわけで。最早虐めではないだろうか。
威を決して正面扉へ…は行かず、その正反対へと目指す。何回か来ているために屋敷の構造は大体把握しているし、彼の部屋だけは熟知している。迷うことなくカーテンの掛かる窓へと近づくと、窓に手をかけた。

(相変わらずやのう…いくら暑くとも戸締まりくらいしろや)

暑いのはわかる。ベルゼブブの館に好んで近づく輩もいないのは知っている。だが夜、侵入口になる扉を開けっ放しでいるのはどうだろうか。本人がいるなら大丈夫、そう思うだろうがアザゼルは知っていた。

「まぁ〜た寝とる……」

ベストのまま休憩のつもりが本格的な睡眠に入ってしまいました、というベルゼブブがそこにいた。彼は時間にうるさい。いつも遅刻するアザゼルを叱る側、本日は五分遅刻したのにお咎めを聞いていないということはそういうことなのだ。

「べーやーん、起きろや。時間やで。」

安らかだった端正な顔が揺すられたことの不満を表している。唸るだけで目覚めることはなく、寝返りをうって落ち着いてしまった。

「早よ起きひんと襲うぞ。」

覆い被さり圧迫感を与えるが身じろぎすらせず安らかな寝顔。心音が早くなった。

(…お綺麗な顔しとる)

男にしては焼けていない肌、いや全体的に色素が薄いために黒い燕尾服がよく映える。意外に長い睫毛や唇の赤さなど人間が惹かれて止まないであろう完璧な容姿が無防備にも目の前に横たわっている。淫魔・アザゼルの前に、だ。

「ここで食わんかったら男の恥やで。」

アザゼルにとって性別は関係ない。自らの欲を満たしてさえくれれば老若男女関係ないのだ。
まずは味見。首筋をペロリと舐めると低い唸り声。不快感を訴えられようが知ったことはない。無防備でいるほうが悪いのだ、そう身勝手な言い訳をしてシャツの第一第二ボタンを器用に開ける。

(おっぱいがないのはしゃあない……)

手をゆっくりとない胸へ侵入させるとゆっくりと手を這わせる。ひんやりした体には驚いたが、ベルゼブブから漏れる扇情的な息遣いにも驚いた。

(こんな声もするんか…遊び慣れとんか?興味ない顔しよってからに…)

急かすように確かめるようにベルトに手をかけてズボンと共に引きずり下ろす。最早アザゼルはベルゼブブが寝ているということは毛頭にない。情欲のまま、自らの欲を優先することしか考えていなかった。

「…何をしている。」

それだけ乱暴に事を進めると誰でも起きる。頭上から聞こえた絶対零度の声にアザゼルは完全に硬直した。

「お、おはようさん。よう眠れたか?」

「何をしているか聞いているんだ。」

「…聞かんでもわかっとるやろ……」

思い切り睨まれた上に、冷ややかな目が更に細くなる。冷や汗が止まらない。

「悪いんはべーやんやで!?今日約束しとったのにすっぽかして寝てるんやもん!それは『アザゼルさんに抱いてほしい』ゆー意味やろ!?」

「何故そうなるんだ。君の頭をかち割って脳を見てみたいな。」

頭を異様な力で掴まれ、これは潰されると覚悟した。しかしいつまでたっても天使の送迎はない。ゆっくりと目を開けると欠伸をかみ殺し涙を浮かべる彼の姿。

「今回は私にも非があるようだからね、入ってきてしまったことはお咎めなしにしよう。」

「ハイハイ、ありがとうございますー。」

「代わりに。ちょっと面を貸しなさい。」

殴る気か潰す気か、今度こそ終わったと思った。だが衝撃はこない。強い力で締め付けられはしたが。

「ちょ、べーやん!?」

「黙りなさい。枕は喋らないでしょう。」

ズボンはきちんと直している、非常に残念である…ではなく。頭を抱きかかえられるという不意打ちに、アザゼルの顔は真っ赤である。

「今日のことは悪かった、と思っています。」

「いやいやそうやないって!」

「眠いのです、寝かせてください…」

声が消えていく、と思えば力も抜けていく。もう夢の中へと旅立ってしまったらしい、胸が規則正しく動き始めてはもう騒ぐことすら出来ない。

(ま、ええわ)

別にそこまで飲みたかったわけではない。ベルゼブブと会う口実が欲しかっただけ。これはまたとないチャンスである…が如何せん身動きがとれない。

(今日だけは我慢したる)

このまま襲うのもいいが、起こせば確実に首が跳ぶ。寝起きが悪い彼は手加減など知らないのだから。

(でもな、ちょっとだけならええやろ)

起きた時、胸元がはだけていたことにベルゼブブが激動し、蠅の王が魔界を半壊させるのはまた次のお話。

+END

++++
『魔界でベルゼブブさんへ夜這いするアザゼルさん』というお題をいただきました!
うん、微裏だ(・ω・)さて、補足だ(・ω・)

そのまま襲ってもよかったかn、ゴホン。楽しいネタをありがとうございました!

11.8.21
修正:11.10.14

[ 128/174 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -