よんアザ | ナノ



素直な気持ち


※ネタ募集枠

『11/8/16 9:11
From:ベルゼブブさん
件名:すみません

こんにちは。本日は大変申し訳ないのですが外せない用があるのでお手伝いすることが出来ません。誠に申し訳ないのですが、またの機会にお願いします。』



「どうしたんですかアザゼルさん?」

今日はアザゼルの様子がおかしい。何をしたわけでもないのに不機嫌であるし、日課の佐隈へのセクハラも全く行わない。やったらやったで鬱陶しいがなかったらなかったで鬱陶しい、いや不気味である。

「わかったーベルゼブブさんがいないから寂しいんでしょ?大丈夫ですって、明日には用事も終わると言ってますし。」

返事はない。ついでに反応もない。
少々からかいもこめてはいたが、ここまで反応がないと佐隈もおもしろくない。

(やっぱり、寂しいのかな?)

いつもは一人でも大丈夫なクセに、と一人ごちながらサラマンダーでも呼んでやろう、と立ち上がった時に蚊の鳴くような声が聞こえた。

「べーやん、お見合いすんねんて。」

こう言われたら「へー、よかったですね」と返すしかないのだが、アザゼルはそれが気にくわなかったようで理不尽にも睨まれてしまった。

「だから機嫌悪かったんですね。…あ、相手の子が可愛いんですか?」

「ちゃう。」

「相手の子が好きだった?」

「ちゃうわアホ。」

「ベルゼブブさんが取られるのが嫌とか?」

自覚をしているのかは知らないが、不自然に押し黙るアザゼルに図星か、と笑みをもらす。

「別にべーやんはお坊ちゃんやし、お見合いとか多いのはしゃあない。だがな、今回に限って了承するんかっちゅーねん…」

「相手の方に何か問題でも?」

「どこぞのご令嬢やってことしか知らん。」

相手のことも知らないというのにここまで憎々しげに語るのも相当である。
アザゼルとベルゼブブの距離には不自然なものがあった。男友達にしては多い身体接触、事務所で会うまで疎遠だったと言っていたのに、それにしても親友以上のものを感じた。どちらともアザゼルの一方的なものだが、これは、どうみても。

「そのまま結婚、なんてあるんですかねー」
「ま、まぁそうなってもワシには関係ないがな!」

(どう見ても、関係ないことないのになあ)

明らかに動揺している目、そして声から嘘をついているなんて一目瞭然。他人の恋愛にはうるさいクセに、自分の場合素直にならない彼はどうしてやるのが最善であるか。思いついては考え直し、また思いついてはまた考えを取り消す作業を繰り返すこと数十秒。

「アザゼルさん、今日はもう帰ってください。」

「なんや、邪魔ってことかいな!」

「はい、ぶっちゃければ…じゃなくて。人の好意は黙って受け取るべきですよ。」

グリモアで魔法陣まで追い立てて無理矢理突っ込ませる。一番手っ取り早いのはこの方法。どうせ言ったところで認めたりしないのだから。

(要するに、好きってことだよね)

「仕方ないなぁ……苦手だけどサラマンダーさんでも喚ぼう…」



一方ベルゼブブは欠伸をかみ殺していた。見合いを了承はしたが、乗り気ではないし結婚など微塵も考えていない。自分から話してやることは何もない、ただただ相手の女性(ちなみに名前もうろ覚えだ)の話に適当な相槌をうつだけの眠く作業だ。

(こんなことなら、あの人間の女に付き合ってやった方がマシだ)

今回の縁談に乗ってやったのは気分。あまりにジイに苦労をかけてしまったからその労いにすぎず、眠くて仕方ない。

(…アザゼル君はまたコキ使われているのだろうな)

本日何回目になるかはわからない。もう数えるのも面倒なほど繰り返された思想に浸り、再び現実に戻るを繰り返す。未だ女は機嫌よく音を発するが相槌も面倒になってきた。

(何か面白い事でも起こらないだろうか…)

「邪魔するで。」

願いが叶ったかのように、突然の行儀の悪い破壊音と倒れる扉。女からは悲鳴が上がったが、ベルゼブブは動じない。振り向かずともわかる、自然と顔が綻ぶのがわかった。

「なんですか貴方は!今は見合いの席、貴方のような低俗な者が来ていい場所ではなくてよ!」

「あ?…ッチ、面倒なヒス女やのう……べーやん、何やっとんの。早よ帰るで。」

「ヒス女!?下級淫魔如きに言われたくないわ!それに優一様になれなれしい!」

「キーキーやかましいな!猿やあるまいし!」

招かざる客ことアザゼルは全くお構いなし。元より品のないことは知っている。だが、まさかそれに救われる日が来ようとは思いもよらなかった。クスクスと漏れる笑いが止まらない。

「優一様…?」

今まで一度も笑わなかったのに、とショックを受ける女にアザゼルは挑戦的な笑いを向け、未だ動かないベルゼブブを抱き上げる。さすがに彼から笑顔が消え、眠そうに伏せられていた目が見開かれた。
それでは終わらない。有無を言わせる間もなく唇を奪い、女の心に更なる追い討ちをかけるアザゼル。勝ち誇った邪悪な顔を最後、風通しのよくなった部屋を後にして…

「馴れ馴れしいんはお前や。二度とべーやんのこと名前で呼ぶなや。」



放心していたベルゼブブが我に返った時には見覚えのある森だった。相変わらず不気味なものがある、いや魔界だから当たり前なのだが、今は無性に心和ませるものだった。

「べーやーん、大丈夫か?」

まだ抱えられていたようだ、アザゼルの顔が異様に近い。熱くなる顔に反射で繰り出した拳。メキ、といい音がして鋭くとがった三角錐が落ちてきた。角が折れたらしい。

「何もすんの!?面倒くさそうやから助けてやったんやないの!」

「お黙りなさい!どさくさに紛れて何をしでかしたこの淫魔が!」

「えぇやないの!面倒な見合い話がこんようになるって!」

「面倒な野郎が寄ってきたらどうしてくれんだ能無し!後先考えろ!」

今の大勢も忘れてしばらく喧嘩をして…やめた。深いため息をつき大勢を整えると、アザゼルを見つめまたため息をつく。

「なんやの。」

「今日だけ特別に、大目に見てあげましょう。」

アザゼルに跨り、見つめ合った状況でこのようなことを言われても説得力の欠片もない。ましてや赤面などしていてはもってのほか。

「『今日だけ、特別に、大目に』?」

「ッチ、許してやりますよ!」

(この、遅かったクセに調子乗ってんじゃねえよバカが!)

+END

++++
やだ……なにこれ…
『べーやんが何処かのご令嬢とお見合い中にアザゼルさんが乱入して、べーやん連れて逃走する(アッちゃんがべーやんを好きだと自覚してからお見合いを台無しにしてやって欲しいです)』
というネタを頂きましたが…やだ……なにこれ…
わかりにくいですが、さくちゃんに追い返されて自覚しました。むしろ開き直りました。

1、いきなりアザゼルさんがきて「!?」ってなる
2、無意識に来るの待ってて相手に見せつけるようにアザゼルさん誘う
3、いきなりキスされて「ちょ、おまっ」てなる
この三パターン浮かんでましたが、なんとなく三番目にしました。べーやん出てからの文をちょいちょいっと変えればあら不思議。全パターン妄想出来ます(・ω・)

あとがき長いw補足にすればよかったですね…よし続きは補足だ!ここまで読んでくださった方&ネタ提供してくださった方に感謝!

11.8.16
修正:11.10.14

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