女王様の恋模様
※さく♂(→)←べー♀
※始めアク→ベル♀
唯一、芥辺に反抗した。
「ベルゼブブ。抱かせろ。」
「い、イヤですっ!アクタベ氏の御命令でも人権侵害は受け入れたられませんっ!」
「何が人権だ。悪魔にんなもんねえよ。」
「悪魔でも強姦は犯罪一一んっっ」
最後まで抵抗した。恐怖を押さえ込んででも抵抗しなければ気が済まなかった。好きでもない、しかも職権乱用をしてまで無理矢理犯そうとするその精神に同意するわけにはいかなかった。
だがそんことは無駄だ、わかってはいた。心も体もズタズタにされ後処理もなく放り出され、気を強くもつことすら出来なかった。
それも、一度や二度ではない。
気遣いも何ももない為に、子供も孕んでいるかしれない。ただただ震えと植え付けられたら恐怖を拭い去れるように自分を抱きしめるだけで精一杯で。
『Form:さくまさん
件名:お久しぶりです
ベルゼブブさん、どうしました?最近仕事にも来ていただけませんけど……具合でも悪いのですか?
具合が早く治ることを願って、おいしいカレーを作って待ってますからね。いつでもメールください。』
佐隈りん。ベルゼブブやその他芥辺事務所にいる悪魔の契約者であり、芥辺の助手である草食系男子である。
初めは男のくせに弱々しいところに不安しかなかったが、段々立派な悪魔使いへと成長して今や主導権も握れるほどに精神までも成長した。
見惚れてしまうほどに、成長したのだ。
(さくま、さん……)
悪魔にも優しい、それは身を滅ぼすことである。だが悪魔にも心はある、感情も好意も嫌悪もある。優しさが、欲しい時もある。
今傷つききっているベルゼブブには、何気ない心配すら涙の元となり肌へと滑り落ちていった。
『To:さくまさん
件名:』
ふと、思いとどまり手を止めた。何も知らないであろう彼に泣きつく、それは自らのプライドにも関わる失態である。だがいつまでも一人塞ぎ込んでいても、行き着く先は最下層の闇。それに惚れた者の弱み、好きな相手に情けなく見窄らしい姿は見せたくないのが、なけなしの乙女心というもので。だが流れる涙が心の悲鳴のようにシーツに広がり汚れを生んでいく。
限界だった。
『To:さくまさん
件名:こんにちは
お久しぶりです。お気遣いのメール感謝します。
すみません、本日の夜に喚んでいただけないでしょうか。条件としては、他に誰もいない貴方の家で。
結界がなくとも貴方に危害を加えないと誓います。生贄もお水で構いません。お願いです。』
送信、のボタンを押してからも震えは止まらなかった。ましてや先程よりも酷くなっている。拒絶されたらどうすればいいのか。心が弱っているときはネガティブになるというが、今のベルゼブブはまさしくその状態であった。
『ブリブリブリブリ…』
返事は思ったより早かった。慌ててすぎて落としかけた携帯を握りしめメールを目で追う作業を始める。
『Form:さくまさん
件名:Reこんにちは
わたしの部屋にですか?きたいですし魔法人を描くような場所なんてないですよ』
変換を忘れたり誤字があったり、焦った彼が容易に想像出来る文に思わず笑いがもれた。『掃除をしてあげますし、要らない大きな紙で構いませんから。』それだけ簡潔にうち送ると、しばし時間がかかって『わかりました。』と短文が帰ってきた。
(相変わらず、悪魔に対する警戒がまるでなっていないな…この童貞野郎……)
汚い言葉とは裏腹に、穏やかな表情で携帯の文を読み返す。彼と会える、それだけで顔が綻び心の傷が消えてくれる気さえした。
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