しんげき | ナノ



言葉にならない

※リヴァイ視点
※時間軸は不明


「ウゴガァァァァァァ!!」

巨人になったエレンは、いつも意味のわからない言葉を話す。それが本当に言葉なのかただの叫びか、それとも苦悶の声なのかは定かではない。
今日は少し勝手が違った。唸り声を一通りあげ終えると、何か言いたげに手を差し出してきた。「危ないですよ兵長!」後ろで叫ぶ部下たちの声は聞かぬふりを決め込み、大きな手のひらに乗り込む。日頃の恨みを込めて握りつぶされるかとも思ったが、ゆっくりと持ち上げられて目の前にまで誘導された。

「グ、グググ......」

絞り出されたものは、相変わらず言葉ではない。もどかしそうに大口を動かすと唐突にしゃがみこんだ。興奮して抜刀する部下たちを諌め、巨人の動きを監察してみる。最寄りの木をへし折ると、まるで枝のように文字を書き始める。決してうまいとはいえない字で。"兵長"と。

「だからなんだ」

決して気は長くはない、自覚もしている。イライラして無骨で歯茎がむき出しの頬に触れれば「ガガッ」と小さな悲鳴。唾が顔にかかりしかめ面をしたのに、慌ててエレンが意味もない円を描いていた木を置いた。腫れ物を触るような大きな指。
まるで壊れ物扱いされているようで無性に腹が立つ。唾を慎重に拭う指に、困惑した緑の丸い目に、いちいちイライラするのはカルシウム不足なのだろうか。きっとそうだ。
焦れったさに顎を蹴りあげてやるがびくともしない。相も変わらずゆっくりと唾を拭ってくる。
ふと、大きく無骨な指が小さな唇に触れた。唇に触れた、というよりも当てたというべきか。落ちているゴマを拾った程度の感覚だろうが、エレンは面白いほどに目の色を変える。

「なんだよバーカ」

指を撫でて煽れば緑の目に金の強い光が宿った。また木を取るとガリガリと文字を書き始めた。同じような汚い字で、「リヴァイさん」と。

「もういい。ハンジ、実験は終了だ! 言葉を話すのは無理だ」
「わかったよ!」

終了の合図をあげたが未だに優秀な部下たちは抜刀の姿勢から崩さない。エレンを相変わらず意味もない言葉を漏らしながら地面を掘り返している。大きさはともかく、これでは拗ねただだっ子である。

「ちんたらしてんじゃねーよ。テメェも早く戻れ」

再び顎を蹴りあげれば緑の目が映る。素直に首肯して、手を地面へと優しく下ろすエレンに小さく呟いた。

「終わったらすぐ部屋にこい。グズグズすんなよノロマ」

「グァ......ズ、ギュ」

今のは言葉と言うのだろうか。想像した意味で正しいのかもわからない。掠れた言葉をを聞きながら、部下の労いに答えながら、リヴァイは小さく笑った。

+END

++++
あなたは『母国語以外の言語を巧みに操る』エレリのことを妄想してみてください。

操 っ て す ら な い
巨人エレンの肩に乗るハンジさんくそかわ
両方ともくそかわ

16.4.11

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