しんげき | ナノ



決意表明の愛

「好きです」なんて戯れ言は何度も聞いてきた。

気休めの恋愛くらいなら付き合ってやらないこともないし、それで心が救われるなら士気にも関わる。
別段命令をされてわけではないが、それが使命のようになっていたのは否定しない。
目の前の男もそうなのだろう。可哀想なほどに赤く腫れたた目を見て、ぼんやりと思索する。
「好きです」
実感の沸かない言葉が頭上から降り注ぐ。血のシャワーより煩わしくはないため、防ぐ理由も感じない。
否定も肯定もないする理由もない。
「なら付き合うか」
男は顔色の悪い肌を紅潮させた。
心の安息を得ると、あっけないほど人は死を恐れなくなる。
少しでも楽になれるなら、と気持ちを受け入れてはいたが、誰も死んで楽になれとは言っていない。もう何度、恋人というの肉の塊を見たかわからない。目の隈はどんどん深くなるばかりだ。

「好きです」

恐れ多くも無謀にも、その新兵はそう言い放った。
いつものことか、と流そうとしたがそうはいかず。ぎらつく眼光に偽りのない言葉。死に急ぎにも、鬼の上司の腕を掴んでは離さない。

「好きです」
「わかった」
「好きです」
「わかったから」
「兵長」

ひたすらまとわりついてくる腕の鬱陶しいことといったらない。忌々しいという表情をするが、その瞳から光が消えることはない。

「お前も死ぬ気か」
「はぁ?」
「知っているか。俺に選ばれた相手は死ぬんだよ」

自らを嘲り笑うと、顔が歪む。さすがに諦めるだろうと踵を返すが、それは叶わなかった。

「アンタが何を言いたいのか、俺にはわかりません。でもアンタが一番知ってるはずです。俺は簡単に死なないって」

強い眼光に、生意気な眼光。真っ直ぐな感情をぶつけられてヘドが出る。いつものように「じゃあ付き合うか」と言ってやれば、笑ったと思いきやすぐにむくれた面になる。
考えていることなどバレているようだ。

「言っておきますが、俺は巨人を駆逐するまで、死ぬ気はありませんから」
「それは心強いな」
「死ぬために、アンタと一緒になるんじゃない。アイツらを殺すため、アンタを守るために一緒になるんです」
「俺を守るたあ、生意気なこと言うじゃねーか」

全く、この子供は予想外なことをしてくれる。あっけらかんと受け入れても、瞳は弱くなるばかりか眼光は鋭くなるばかりだ。
殺しても死なないだろう、この子供に何度殺されそうになったか。何度救われたか。

「おいエレン」
「はい」
「次の遠征で生きて帰れたら、キスしてやるよ」
「えっ」
「不満かよ」
「今がよかった、なんて。はは」
「少し冷静になる時間も必要だろ」

エレンにも、勿論リヴァイにも。
それ以上はなにも言わずに、顔を見られないように踵を返した。

+END

++++
創作向けお題ボットより
よーく頭冷やして、それでもまだ俺のこと好きっていうなら、もう一度おいで


16.7.18

[ 14/17 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -