ゆぎお | ナノ



距離感


※ホープ擬人化


皇の鍵の中は何もない。
障害物も乱雑に置かれた私物も何もなく、ただ静かにアストラル世界へ繋がる鍵の船と乾いた砂漠が続くだけだ。
空は今日も黒で覆われている。

その船の中、ナンバーズたちが集められて顔を合わせる場所がある。そのナンバーズたちの正面に横たわり眠る者がいた。
ナンバーズの、鍵の所持者であるアストラルである。その傍らにもう一つの姿。
白と金の豪華な甲冑に身を包む、程よい筋肉な青年だ。強い意思を持ち、真っ直ぐな光を帯びた優しい赤い瞳はアストラルを真っ直ぐ見つめて微動だにしない。彼の名はNo.39希望皇ホープ、遊馬とアストラルの戦友とも剣とも言える存在である。
安らかな寝顔で横たわるアストラル。その安らいだ表情を見下ろしながらホープの顔が綻ぶ。しかしすぐに険しい顔になると溜め息をついた。

主を守らないといけない。

険しい顔で、皆から離れた一角を睨みつける。輝かしい船には似合わない鉛の鎖。中心には問題児のNo.96ブラック・ミストが封印されていた。かつては遊馬やアストラルの自由すら奪うほどの力を秘めた存在だ、いつ暴れ出し危害を加えてくるか油断できない。
しかしアストラルを見つめていたら気が緩んでしまい、頭を振っては煩悩を吹き飛ばす。

見惚れていてはいけない。

『主……』

呼んでも起きないほどに、今日は疲れていたのだろうか。アストラルはヒトと違い睡眠を必要とはしないが、休息の為に意識を遮断する。しかしここまで無防備になるのも珍しい。

貴方は私が守ります。命に代えても守り抜きます。

傍らに腰を下ろそうともせず、ただただNo.96と周囲、アストラルへと順に視線を移す。ホープの見張りは自主的に行っている毎晩の日課だ、アストラルも知る由もない。初めは実体化するだけでも疲労感に苛まれたが今はもう一晩くらいどうということはない。

それもこれも、大切な主のために。

『お慕い申し上げております。』

記憶を失っても使命を真っ当しようとする強硬な意識に、その強い力を秘めた金の瞳に。何よりも美しい姿と意志に忠誠を誓った。


全て忘れてしまおうとも構わない。
たとえこの想いが届かなくても。傍にいれるだけで幸せです。

無意識に頬へと伸ばされた腕を、触れる前に慌てて引く。寝返りと呻きに体を強ばらせながら、すぐに冷静さを取り戻してドアから覗く小さな空を見つめた。
この世界は、主との関係に似ている。
乾いていて、しかし広大で逃げ場はなく、広い筈なのにつかず離れず傍にいるしかない。先の見えない、暗い世界。

皇の鍵が、呑気に眠る遊馬の首もとで瞳のように光った。

++++
いつもワンパターンになっているので、まずはボキャ貧をなんとかしたいですね。

15.3.3
修正15.3.22



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