意地っ張りの闘い
※ファラオ=ユウギ表記
綺麗な星が輝く夜空が小さな窓から覗き込んでくる。ユウギは1人、そんな美しい光景を見上げていた。
遊戯は既に眠りについている。微笑ましく寝顔を見つめ、触れられないながらも頬へと手を這わせた。
「今日もお疲れさまだぜ、相棒。」
これ以上ここにいては、起こしてしまうかもしれない。「もう一人の僕」という寝言に微笑んで、ユウギは千年パズルへと戻ることにした。
遊戯の部屋が静かなことを確認し、自分の部屋へと入ろうとしたのだが。
おかしい。なにか違和感を感じる。
警戒しつつ扉を開けると、特に何も変化はなかった。
気のせいだったのだろうか、最近気を張りつめすぎなのだろうか。ため息をつくと、いきなり背後から声がかかったことに驚いた。
「不用心だな。立派な鍵でもかけとけよ?」
背後の死角にいたのは、壁にもたれかかりながらニヤニヤ笑うバクラだった。
「どうしてここに?」
「パラサイトマインドだ。こんなところに入る程度、造作もねーよ。」
「油断も隙もない泥棒だぜ。」
「泥棒じゃねぇ。盗賊だ。」
「同じだろ?」
「ちげぇよ。」
真剣に言い返してくるバクラに、ユウギはおかしくなりクスリと笑った。その笑いをバカにされていると勘違いしたバクラは、ユウギに詰め寄り壁まで追い詰めた。
「何がおもしれぇんだ?」
「お前にも拘りがあるんだなってさ。」
小さなことでムキになるバクラがおかしくて。再び笑い出すとバツが悪そうな顔。しかしすぐにいつもの余裕を取り戻し、八重歯を見せて笑う。
「全くよォ。俺様が会いに来たんだぜ?もっと反応ねぇのかぁ?」
壁に手を付き、ユウギを捕らえる。獲物を前にして舌なめずりをするバクラだが、ユウギも余裕な顔を崩さない。
「別に会いにこいなんて行ってないぜ?」
「かわいくねぇの。」
眉間にシワを寄せると、反応を楽しむようにユウギが笑う。振り回されてばかりなのが、余裕なのが面白くなくてバクラの眉間のシワを不覚なるばかりだ。
「嘘だ。俺も会いたかったぜ。」
しかし、恋人であるバクラにしか見せない、綺麗な笑顔につい甘くなってしまう。相棒の遊戯以外には、プライドが高いユウギが素直になるなんて珍しい。目を丸くしているとユウギはその隙に腕から逃げ出した。
「ま。お前みたいに夜這いをかけるほどじゃないけどな。」
「別に、俺様はテメーほど会いたくてたまらなかったわけじゃねぇよ。」
「じゃあ帰るか?」
これは確信犯。悪戯に笑うユウギに呆れ半分可愛さ半分、憎さが少し。乱暴に白い髪をかきむしると、自然と深いため息がもれた。
「テメーが寂しくなるだろ。」
「そうかもな。」
冗談のつもりだったのに。さらりと返された言葉の衝撃で思わず赤面してしまった。
我慢できるはずがない。
気付いたときには、ユウギの腕を掴みベッドに押し倒していた。
「何するんだ。」
「何されるかわかってるくせによ。」
「嫌だ、と言っても無駄か。」
「そういうこと。」
わざとらしいユウギのため息だが、抵抗しないのは無言の了承。首筋に顔を埋めるが、小言しか聞こえてこない。
「明日には響かないように頼むぜ。」
「努力できたらな。」
初めは殺したい位に憎かった。何度も命がけの戦いもした。
しかしなんの因果が、今では失うには惜しい存在になってしまった。
まだ言葉にしたことはないが、これが愛なのだろうか。
答えはまだ出さない。
+END
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初バク王でした
修正15.1.4
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