ゆぎお | ナノ



香り


※現パロ
※アストラル女体化
※双子の兄…ミズト、妹…アスト



「ミズト。今回は何を始めたんだ。」

「香水。」

ミズトが香水を始めた。
ミズトは勉学を真面目に取り組まなければ、喧嘩もする、女遊びで問題になったこともある。そう、俗に言う"問題児"というやつだ。
確かに見た目はいいと思う。そして人の心を掴むのが上手く、様々な年齢の女性といる姿を何度も見た。高そうな私物が増えていくのは「貢がせている」とは聞いたが、香水なんていう小洒落たものは初めてだ。新しいナンパ方法だろうか。それはわからない。

「…匂いがキツくないか?」

「やっぱキツい?」

このツンとした匂いは、男性用なのはわかる。だが、これが一般的に使われるものかはわからない、学校にまで香水をつけてくる問題児はいない。
別に人の趣味をとやかくいうつもりはないし、香水は自由だ。だが、勉強中の妹を膝に乗せて、激しく密着したがるのはいただけない。嫌がらせで匂いを擦り付けているのだろうか。

「匂いが移る。離れろ。」

「やだね。」

「彼女がいるのだろう。」

「今日別れてきた。」

女性を大切にしないミズトに、アストは眉を寄せた。兄を叱ろうと、シャーペンを置き振り向こうとする前に小さく悲鳴を上がった。ミズトが項に鼻をこすりつけたのだ。

「お前、体臭しねーな。やっぱこっちがいいや。」

「ミズトっ!」

「なんだよ。」

「変なことはするな、と毎度毎度言っている!」

「ふーん?お前の言う"変なこと"って、こっちだろ。」

決して大きくない胸を、ミズトの手が鷲掴みにする。揉み込むよう動く度に、アストの背にぞわぞわと、何かが這い上がるような感触が走る。調子に乗ったミズトは、イヤラシい指使いでブラウスのボタンを、第一、第二と外して手を入れようとした時。柔らかい少女の胸の感触ではなく、手首に痛みを感じた。

「いってえ!!」

アストに手首を捻られた、と気付いたのはそう時間はかからなかった。彼女は護身用に合気道を中心に格闘術を学んでいることを忘れていた。今までストーキングを行った男たちは、皆アスト直々に制裁を加えられたことも。

「ギブっ!ギブキブ!!」

「反省したのなら離れろ。」

「わかった、もう変なことはしねえから!」

「離れろ。」

「膝に乗せることは許してくれよ!」

「離れろ。」

とりつく島もないとは、この事だ。無感情に睨まれては、誰でも怯むであろう。しかしミズトは引かなかった。意を決してアストの腰に腕を回して抱え直すと、冷たい金の目が静かにミズトを見つめてくる。

「次はお前の自慢とやらを潰す。」

「お前に悪い虫がつかないように、マーキングなんだよ!」

顔か股間かはわからないが、次狙われているのはどちからだ、それはわかる。だがミズトにも引けない理由がある。

「最近、お前をオカズにしてるって奴が周りに増えたの!」

「それと何の関係がある。」

「…純度100%のお嬢様にはわかんねーか…。」

「貴様、バカにしたな。」

金の目が細くなったことで、ミズトは慌てて弁解する。体を解放して逃げれば早いのだが、これはミズトも譲れない。

「お前がオレのだって、アピールしないと困るの。」

「私はお前の物ではない。」

「でも、好きだろ。」

「バカか。」

ミズトの問いに、待っても返事はない。
自意識過剰に呆れた様子で、それでも否定もしないアスト。

「初めて、オレの金で高価な買い物したんだ。イヤとは言わせねーぞ。」

ミズトは「香水臭い女は嫌いだ」とぼやいていたことがある。そんな彼の趣味ではない、強い香水を選んで自腹を切ったという。
早い話、二人共同で使えばいいだけだ。だがミズトは敢えて接触して二人で共有することを選んだ。遠回しすぎる甘えと、独占欲にアストはため息をついた。

「次はもっと落ち着いた匂いを選べ。」

「…女の甘ったるい匂いって、嫌いなんだけど。」

「ならばお前の好きな匂いを選べ。わざわざ我慢してまで使用するな。」

「はいはい。」

ニヤニヤ笑っていると、勘に触ったのか鼻を摘まれた。抵抗はするが、腕に回す手を外せば逃げられてしまう気がする。頭を振って手を除けようとすると、アストが笑っていた。

「変な顔。」

何事もなかったかのように、再び机にむき直してペンを走らせる音が聞こえる。しばらくこうしていてもいいらしい。慣れ馴染んできた香水の蓋をもう一度開けると、やはり強烈な匂いで顔を背けた。アストの首筋に塗り込んでみたが、同じ匂いがする筈なのに不快感はない。
勝手な行動の制裁にすぐさま額に裏拳を食らい、香水も取り上げられた。手首に塗り込むアストの姿を眺めながら、ミズトは笑った。

+END

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マーキング96アス

14.12.10



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