ゆぎお | ナノ



スターシック

※A5本編後日捏造
※時間軸としては5Dの二期前のパラレル軸だと思ってます



「あいつら、行ったらしいな」
「ああ」

セキュリティと別次元からの侵略者の事件以来、何事もなかったかのように平和が訪れた。
謎の穴に吸い込まれた遊矢たちは無事だろうか。残された赤馬もやることだけをこなして、後を追うように姿を消した。
まるで夢でも見ていたような静寂に、嵐の前の静けさに似た不安と、同時に強者の存在への高揚を感じる。

「奴らといたら退屈しなかったな」
「そうだな」
「まるで昔に戻ったみたいだったぜ」
「俺も憑き物が落ちたようだ」
「落ちたのはキングの称号だろ」
「うるさいぞ!」

こうやってふざけあうのも何年ぶりだろうか。感情的になって喚くジャックをからかいながら、携帯をしまって子供のように笑う。
それでも表情にさす黒い影を感じざるを得なかった。

「この町の危機だというのに、アイツは今どうしている?」

アイツ、なんて改めて聞かなくてもわかる。ボサボサの髪を更にかき乱しながら唸り声をあげる。

「俺にもわからないんだっつの。いきなりフラりといなくなって、それっきりだ」
「勝手な奴だ」
「お前も言えたことじゃねえぞ」
「アイツがいきなりいなくなることはなかった」

噛みついてこないなんて珍しい。目を丸くするクロウに構うことなく、手すりへと体を委ねる。横でもたれ掛かると、ため息に目を見開いた。

「スターダストを取り戻しにも来ないとは。ましては俺を追いかけて来ないとは......」

本音は後者のほうだろう。拗ねる姿を見るのも久しぶりである。
丁寧にスリーブまで付けたスターダストをスカスカのケースから取り出し、ジャックは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
しばらく眺めているのも一興だったが、癇癪を起こされてもかなわない。なんとかフォローを入れてやろうとしたところで、機械が大きく小さく聞こえる。
聞いたことのないメロディに、慌ててポケットというポケットをまさぐる。やっと出てきた白い携帯を必死に開くと、ジャックの目が見開かれた。

「誰だ?」
「デリカシーのない奴め」
「万が一女だとしても、お前には言われたくねえよ」

投げ渡された携帯には、件名だけのメールが届いていた。送り主は。

「お前まだ登録してたのか」
「当然だ」
「返事がこねえから、着拒されてるって言ってたぞ」
「拒否ではない、無視だ」
「クソ野郎が」

携帯を折ってやろうと手に力を込めると、引ったくられた。本気で睨むことはないだろうに、敵対心丸出しの紫の目は正直怖い。
メールには短い文が1つ。
遊星から"もうすぐ帰る"と。
目に見えてそわそわしているジャックにため息をつく。
無視をされてもメールを送る遊星も胆が座っているというか、なんというか。凸凹な友人を見比べ、力なく笑った。

「ジャック」
「なんだ」
「ただいま」

第三者の声と、背中への突然のぬくもり。慌てて振り返ろうとするジャックだったが、腕の力が強すぎる。動くことも出来ず、赤くなるしかない。

「おう。おかえり」
「ただいま」
「ゆ、ゆゆゆ遊星!貴様!メールは!」
「そこで送った」
「お前周りが見えなさすぎだろ」

遊星が指差した先から、赤い遊星号が覗き見していた。雑木林ではあるが、隠しているわけではないとわかる。
丁度目についたクロウは気がついていた。メールを送って数分後、ジャックが拗ね始めた辺りから来ていたことを。

「元気そうだな」
「お前もな。どこ行ってたんだよ」
「ラリーが風邪をひいた。近くに薬がなかった」
「お前が出掛けてる間、大変だったんだぞ」

意地でも放そうとしない遊星に、ため息をつくばかり。抵抗をしないバカップルを見ているのも腹が立つ。
帰ろうと踵を返したところで、ついにキレる声がした。

「貴様!いい加減にしろ!」

ベタベタと引っ付いてくる成人手前の男は暑苦しくて鬱陶しいだろう。我に返ってくれた、と安堵したのも束の間。

「俺に隠れてコソコソとクロウと共謀していたというのか!」

こんな近くにいながら気づかないお前も悪い、と言いたいが火に油を注ぐのは避けたい。
なんとも言えない表情で口をつぐんでいたが、遊星は素直に謝罪をした。

「しかし勝手に消えるお前に言われたくはない」
「なんだと!」
「会いたかった」
「聞け!」

暴れるジャックを止めるために、唇を押さえつける。白い肌がみるみる赤くなり、動きも止まり静かになるのはさすがというか。
腰も抜け座り込むジャック。これ以上はここにいてもしょうがないと徐々に距離をおくとしよう。

(この町の命運も、ジャックもアイツに任せておけばいいか)

丸投げと言えば聞こえは悪いが、遊星は本当にやってのけてしまう男だ。

「ジャックと戦えば、この町の危機も次元戦争とやらもなんとかなる」
「当然だ!」
「同性でもなんとかなる」
「なんの話だ!」

『ラリーのお見舞いは任せろ』
タイトルだけの短文を残して、いちゃつく2人に背を向ける。
こんなジャックを見たら、遊矢たちはどう思っただろうか。遊星と気は合いそうだし、また面白いことになるかもしれない。
現実逃避をしながら、クロウがDーホイールに乗り込むと、ジャックの怒声が丘に響き渡った。

+END

++++
似たようなものを書いた気がしますね...

16.6.11

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