ゆぎお | ナノ



何度でも


すぐに怒る、すぐに拗ねる、言うことを聞かない。それでも可愛くて仕方がない。なにをしてもまずは文句から返ってくるし、少しでも気にくわないと臍を曲げる。 恥ずかしがるくせに独占欲が強い、気は強いく、機嫌を直すだけでも半日から2日かかるとなれば、骨も折れるし気も滅入る。
周りからは「別れろ」と何度も言われてきたが、そんな気にはなれなかった。 甘えたがり、そして実は誰よりも想ってくれているのは知っている。 手放すなんて考えられないほど近い存在になってしまった。
そんな恋人をどうやってなだめているか。実は案外単純で、いつも同じ手を使っている。

「好きだ」

飽きもせずに同じ言葉を囁けば、「知っている」と仏頂面が返ってくる。眉間の皺はさっきよりは減っており、見つからないようにほくそ笑む。

「好きだ」

再度同じ言葉を囁いてみる。先程よりもイライラした様子で「知っていると言っている」と返ってくる。眉間の皺は増してはいるが気にすることはない。

「好きだ」
「ええい、いい加減にしろ!!」

ついに煮えを切らせたジャックが怒声をあげるが手はあげない。諦めずに囁けば蚊のように払われた。それでもジャックを見て笑う。

「まだ怒っているのか?」
「当然だ!人のカップラーメンを勝手に食いおって!」
「だからあれはすまなかったと」
「すまんですんだら替え玉はいらん!」

喧嘩の原因など、いつもくだらないことばかり。一方的にジャックが怒っているにすぎず、遊星に関しては怒る以前に微笑ましいと感じている。

「悪かった」
「悪いと思っているなら相応な態度があるだろう」
「好きだと言っている」
「だから貴様はぬるいと言うんだ!」

一人で喚き散らすジャックに、ついにクロウがキレた。ズカズカと近づいてきて容赦なく頭を叩く。

「うるせえんだよ、近所迷惑を考えろ。独り身のことも考えろ」

大きな子供には厳しいクロウが、冷めた目で見下ろしていた。謝罪をするが信用ならないと言う目がこちらを見てくる。やっと視線を離し「バカップルの相手は疲れるっての」とぼやく声が遠退いていく。
しばらくの沈黙と反省。喧嘩の理由も理由だ、大人げなかったかと最後の謝罪を残して立ち去ろうとすれば、腕を掴まれた。
無言で見つめ合うジャックと遊星。耐えきれずに口を開いたのはジャックだった。

「あと1回で許す」

逸らした顔は何よりも雄弁だった。その可愛い表情と素直になった御褒美として、笑顔で最後に囁いた。「好きだ」と。

+END

++++
あなたは『「好き」って言うとすごく嬉しそうにしてくれるから何度も言いたくなっちゃう』星ジャのことを妄想してみてください。

16.5.4



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