ゆぎお | ナノ



言えない、言わない


最近、もう一人の僕がよそよそしい気がしてしまう。
前からそうだった、と言えばそうかもしれない。最近はそれ以上、というか過剰になった、というか。気のせい、と言う人もいるかもしれない。話しかける度に肩を跳ねさせる姿を見るまでは。
何か気にさわることをしただろうか、と思い返しても思い当たる節はない。本人に聞いてもどうせ流されるだろうし、進展のないまま無駄に時間だけが過ぎてしまった。

「もう一人の僕はどうすればいいと思う?」
『えっ、あ、相棒に任せるぜ』
「悩んでるから聞いてるのに」
『す、すまない』

最近の話だが一緒にデッキを組んでいる時も上の空で、心ここにあらず。いつも適当な受け答えをされてはこっちもしょげてしまう。

「僕といるの、楽しくない?」

わざとらしく汐らしい声で言えば面白いほど慌ててくれる。感情的なところを見るだけで安心はするが、真意がわからず、もやもやするもの確か。

「もしかして、一人でデッキを組みたい、とか」

集中したいというなら邪魔はしたくない。親離れされるような感覚に陥るが、嬉しくもある。体を明け渡そうと意識を集中させると腕をつかむものがある。勿論ユウギしかいない。

『そういうことじゃ、ないんだぜ』

声が少し震えているような気がするが、俯いていて表情すらわからない。背中を押されて再び自室で目を覚ませば、少し落ち込んだユウギが傍らに座っていた。

『すまない、ちゃんと手伝う』

顔を真っ直ぐ見つめてくるユウギに首を傾げはしたが、詮索しても答えてくれるとは思えない。再び高揚する気持ちを抑えながら、冷静にカードを手に取った。
唇を引き結ぶユウギには気がつかず。

(俺以外のことで、嬉しそうな姿を見たくないなんて)
(一緒にデッキを組めるだけでも、こんなに楽しいなんて)

言えるはずはない。

+END

++++
あなたは『嫌われたくなくて言えない我儘がある』表闇のことを妄想してみてください。

まだ付き合ってません

16.4.25



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