最期の願い
※パロ?
「お前を殺して俺はお前に成り代わる。」
何度言われたかわからぬ言葉を、ただただ冷めた心で聞いていた。鼻先には磨がれた銀のナイフ。確実に眉間を狙う辺り、慣れているなと染々と考えてしまう自分の冷静さには驚いた。
心なんて、すでになかった。
どこかに置いてきたのか、もうこのナイフに殺されてしまったのか。
もしかしたらもう「遊城十代」という存在は殺されており、自分はただの脱け殻なのかもしれない。第3者のような淡々とした思考で、真っ直ぐ光る刃の切っ先を見つめた。
「成り代わった後はどうすんだ。」
金の瞳は答えない。
いくら見つめ返しても、輝きの中には光はなく闇しか見えない。なにも見えない。
「俺とお前は『同じ』だろ。どちらかが欠けてもなにも問題はないだろうな。」
ナイフが眉間に浅く突き刺さる。痛みはない。ただ血が流れる冷たさだけを感じる。
「だけど、『同じ』なんだ。きっと今俺が感じてることと、お前が感じてることは同じだと思ってる。違うか?」
返事なんてない。痛みもない。
ただ金の刃が十代を痛いほどに突き刺してくる。
「どうしてこうなっちまったんだろうな。」
金の刃が迷いを帯びた光を放つ。
食料は尽きた。
助けは当分来ない。
十代の足も動かない。
死ぬのは時間の問題。それでも。
「"俺"は生き残る。なにがあっても。」
たとえこの体が犠牲になろうとも、"同じ存在"なのだから。"俺"が死んでも"お前"は生き残る。命も、社会的地位も保証される。
一時の迷いで命を粗末にするんじゃない。これが重要な決断なのだ。1人分の場所には2人もは入れない。ならば次も必ず彼らは『同じ』選択をするだろう。
(さぁ、早く俺を殺してお前は生きろ。)
(お前を殺せるわけがない。さぁ、早く抵抗して俺を殺せ。)
++++
【十覇語り】暗殺者or復讐者と殺害対象者の関係になった2人(※元々その関係の場合は立場逆転で)について語りましょう。
何回目かわからない、予定もないのに書いてはいけないといういい例
15.9.8
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