ゆぎお | ナノ



勝者は誰?


※ユベルの性別はフタナリ




「ユベル。お前は男なのか?それとも女なのか?」

『十代。いきなりどうしたんだい?』

「深い意味はないぜ?」

夜も更けると二人の時間がやってくる。昼間、十代にまとわりつく弟分たちや仲間たちもいない、十代とユベルだけの時間。
今日は突然十代から不思議な質問だやってきた。ユベルはしばらくポカンとしているが、十代はニコニコ笑ったままだ。

『どうだったかな。覚えてないや。』

「どちらでもないのか?」

『フタナリってことになるかな。』

ユベルは人とは呼べない自分の体を見下ろし、くるりと一回転。悲観した様子もなく、淡々と呟いた。
ユベルが人を捨てたのは、十代のため。十代を守るため。十代のために人間を捨てたことは誇りはすれども後悔する必要はない。ユベルの気持ちは昔から変わらないのだ。

『突然何?』

「いやな。俺たちは周りからどう見えてるのかなってさ。」

『意味がまだ掴めないんだけど。』

「俺たちの関係。」

十代の言いたいことが、まだイマイチわからないと、ユベルは首を傾げた。周りから、どう見られているかなんて、気にしたこともなかった。"ユベル"という精霊は、まず他人には見えない。見える素質を持った者でも、十代の魂と融合したユベルを見ることは出来ない。それなのに、十代は何を言っているのだろうか?

「やっぱりわからないよ。」

「"精霊"と一言で終わらせられるわけもなければ、"相棒"っていうにも俺がなにかしっくりこない。」

「つまり?」

「ユベルが女なら、"恋人"でしっくりきたかなって。」

十代の意外な言葉を、ユベルが理解するのに数秒間。ユベル自身「愛」という言葉を多様はするが、十代だからはっきりと言われたのは初めのことだ。自分でいうのと人から言われるのはまた違う、ユベルは顔が赤く熱くなるのがわかった。

「顔、真っ赤だぞ。」

『そりゃあこんな不意討ちくらったらね…』

恥ずかしくなり手で顔を覆うが、見透かしたように笑う十代。悔しくなり、睨みつけるが意味はない。

「可愛いぜ。」

『うー…。』

「こんなユベル、珍しいなんてもんじゃねーな。」

からかっているわけではないが、ユベルにはからかわれているとしか感じられない。大らかに笑う十代の頭を軽くひっぱたき、拗ねて丸くなりながら睨みつける。そんなことで態度を改める十代ではないが。

『ボクが女の子の方がよかったの?』

「そういうわけじゃない。」

『じゃあなんで?』

「性別なんて関係ないけどさ。お前はお前、だろ?ただ改めて性別が気になっただけだ。」

また不意討ちだ。
サラリと言ってのける辺り、自覚はない。再び真っ赤になるユベルを見て、首を傾げる始末だ。憎たらしいったらない。

『…十代は天然タラシだね。』

「そうか?」

『でもそこが魅力。さすが十代。モテるのがわかるよ。』

「俺はモテねえよ。」

『それだから天然なんだよ。ボクが大変なの自覚してよね。』

「お前は嫉妬深いよな。少しは俺のこと信用しろよ。」

『信用してるけど、いつどこぞの女狐か弟分に取られるか心配で心配で。』

「ハハ、すっかり保護者。」

前世からの保護者、もとい守護精霊。
途中、思いのすれ違いもありぶつかりもしたが、今やなくてはならない半身である。
まだ開いてしまった時間を償うように、ユベルの愛に答えてやれているかは十代にはわからない。

「俺はユベルが心配。いつ何かの事件に巻き込まれたらってさ。」

『精霊であるボクが、事件に巻き込まれるはずないじゃないか。それに力を手に入れた。自分の身くらい自分で守るよ。』

「それは俺も当てはまるだろ。俺には覇王とユベル、二人の"力"がある。信用でき、心強い"力"が。俺達、いつまでも一緒だろ?」

十代の最上級の笑顔に、ユベルは見惚れてしまった。最近見ることのなかった笑顔。ユベルは自分がそれに関わっていることはわかってはいたが、ユベルも必死だったのだ。異世界での事件を悔いたことはない。
だが、寂しくはあった。悲しくはあった。十代から笑顔を奪ってしまったことが。時折見せる、一人寂しそうな顔が。

『そうさ。いつまでも、死ぬまでいっしょさ。』

「はは、こりゃ死神より質が悪いな。」

『フン。死神なんて、ボクの敵じゃないよ。』

「そりゃ頼もしい。」

二人仲良く笑い合う姿からは、異世界で傷つけあい、死闘を繰り広げたことは想像も出来ない。あの時は思い描きも出来なかった和やかな空間がここにある。

あの戦いで勝ったのは十代を手に入れたユベルか、それとも仲間を守り抜いた十代か。

「ユベル、好きだぜ?」

『ボクも。』

赤い顔で笑いあう二人の決着はまだつかない。
決着は、永遠につかなくていい。

+END

++++
修正前は覇王もいたけど、いらなかったので省きました。
ユベルはフタナリ派。

修正14.10.19



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