幻すい | ナノ



奴隷物語

※パラレル
※主人公1主×奴隷(仮)フリック



目があった時から、運命を感じていたのかもしれない。逸らすことの出来ない視線に、謎の直感。これから、長く付き合いがあるという直感。自分より年下な小綺麗な少年が、瞬く。
第六感はあてにならないものだ。我に返ったように踵を返し、檻の外の少年は元来た道へと消えていった。残念だ、という謎の意気消沈と、檻の中は退屈だという倦怠感。膝を抱え直してため息をつくと、律儀にも檻をノックする人物がいた。それは先ほどの少年ではないか。

「今日から君は自由だよ。」

満面の笑みと、その手には青銅の鍵が握られていて、籠の鍵が開くまで意味が理解出来なかった。


***

下品なニヤケ面を浮かべた奴隷商人から逃げるように背を向けて目を細めた。
この街はどこだっただろうか。暗い布を被った部屋の中で何日も過ごしていたから、時間感覚も土地勘もすっかり狂ってしまっている。久々に浴びる太陽光が体は体に毒だ。買われた際に渡された青いマントを体に強く巻きつけた。

「何をすればいいんで?」

何故この少年は自分を買ったのだろう。何が出来るか、など何も聞かれていないし、商人と話していた様子もない。何もできない訳ではないが、万能ではないため何でも出来る訳ではない。そういうつもりの問いに、少年は首を傾げた。

「何がでしょう?」

「出来ることは、力仕事、用心棒くらいですか。」

「ああ、お仕事ですか。」

本当にわかっていなかったのか、少年は納得いったと手をたたく。

「私は娯楽で貴方を買っただけです。人手が欲しかったわけじゃない。」

「は?」

「貴方が綺麗だったから、買ったんです。」

「…男色趣味か。」

「心外です。私は貴方の目が綺麗だと思ったんです。奴隷として終わるには、勿体無い目ですから。」

確かに容姿は何度も褒められてはきたが、パーツを褒められたのは初めてだ。目元に触れるが、勿論自分の目など見れないしわからない。
しかし意味がわからない。少年の目的も見えない。混乱していると手を握られた。少年だ。

「そういえば、まだ名前を聞いていませんでしたね。」

「…フリック。」

「フリックさんですね。よろしくお願いします。」

丁寧に頭を下げる少年は、きっといいところのお坊ちゃん。金持ちは嫌いだ、と目を細めたが自分は『商品』。奴隷商から出てきた以上、今日からこの小綺麗な少年の『物』なのだ。

「敬語はやめ、…てください。アンタはお、私の主人になったんだろう。」

今度は視線を合わせられずぶっきらぼうに答えるが、少年は首を傾げるばかり。何かおかしなことを言っただろうか。敬語が苦手なのは至極承知。それでも失礼な事を言った覚えはないが。

「家はどこですか?」

「ソルジ村。」

「じゃあここから北です。出口まで送りますよ。」

「おい。会話をしろ。」

「言ったでしょう?貴方は自由だって。」

嘘を言わぬ無垢な瞳が、手と足の枷をも外す。理解出来ないと少年を見つめるが、ニコニコ笑うだけだった。

「どうせまた、賭博で負けて売られたんでしょう。あのオッサンはそういう人ですから。」

一瞬見せたケラケラと品なく笑う姿に、不思議な安堵感を覚えた。

「さ。また捕まると厄介ですから、早く行ってください。」

長いマントから出てきた小刀に、目を丸くした。ぼんやりしているようで、しっかりしているようだ。

「護身用のこの小刀を持って行ってください。大丈夫、お代はツケておきますよ。」

この少年は本当に逃がしてくれるようだ。笑顔で手を振り見送る体制の少年に、フリックは眉を寄せる。奴隷はかなりの値段である。若くて綺麗な者は、報額の値段で売れる。フリックも例外ではない。
なのに何故こんなに簡単に手放そうというのか。先程の『綺麗だから』は理由にならない。

この少年のことが、純粋に気になった、それが始まりだった。

「それじゃあ俺の収まりがつかない。働かせてほしい。」

ナイフと好意を押し返せば、丸く目を見開いた。予想外なのも仕方ない。自由になれるというのに、そのチャンスを自らを手放す者なんていないだろうから。
しばらく唸っていたが、ヘラリと笑った。

「んー…じゃあ、一晩だけお願いします。」

ナムダの言葉に、フリックは顔をしかめた。何でもするつもりではいたが、体を求められるのは好かない。しかも相手も同性の男である。

「俺は男の相手なんてしたことないぞ。」

「大丈夫。変な意味じゃなくて晩酌ですよ。」

勘違いに恥で顔が赤くはなるが、仕方のない勘違いだろう。基本的に奴隷の扱いは粗雑である。肉体的に精神的に無理強いをさせる場合もあれば、なぐみ者にされる場合もある。女の奴隷は早く売れることもあるし、男色趣味も少なくはない。

「じゃあ、これからよろしくお願いします。フリック。」

幼く、しかし大人びた笑いを浮かべるこの少年が、今日から主人となる人物。

+END?

++++
一旦切ります。
まだ書きたい分がありますが、ぶり返しが難しい…萌補充をしなければ…
予定は下記通りでした(過去形)


フリックを買取&お持ち帰り
→他の使用人も元奴隷 坊ちゃんに恩返し中
→ナムダの話し相手としてフリックがよく呼ばれる
→新しい子(ルック)がくる
→口移しor熱を計ってるのを勘違いで口移しだと思った場面を見て、ナムダに恋していると自覚
→あまり構って貰えなくなる(ヘルスケアが終わったから、大丈夫と判断をされた)
→ナムダと一緒にいたいと仕事に励む

15.1.11

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