魂喰
「フリックさーん!何処ですか!?」
朝から晩まで、ニナは忙しなく走り回っている事は、城の中では有名な事である。理由は、愛しの王子様を探すため。廊下ですれ違った、他の男を気にすら止めない少女にナムダは苦笑しながら部屋に向かった。
グレッグミンスターを飛び出してからは、嫌というほど浴びていた視線。好奇と畏怖の念は隠れ住むうちに薄れていった。今や、生きていると知る者も少ないであろう。人を集める力、と言われたがこの人たちは皆『輝きの盾の紋章』の元集まったのだ。人の魂を食うソウルイーターなんかじゃない。だからといって、どうということはない。ソウルイーターは、元々忌み嫌われるべきなのだから。
「ナムダ。どうした?」
気がついたら、壁に体を預けていたようだ。心配そうに覗き込んできたのは、旧友のフリック。先ほど少女に探されていた青年だ。
「大丈夫だよ。心配かけてごめん。」
「本当か?顔色が悪いぞ。」
「そんなことより、さっきニナちゃんが探してたぞ。逃げなくていいのかな?」
茶化すつもりで言ったのだ、それ以上でもそれ以下でもなかった。だがフリックは不機嫌な顔を浮かべ、無理矢理ナムダの肩を掴む。
「そんなこと、とはなんだ。お前の体調優先だろ。」
いつもなら苦手なニナから逃げ出すのに。迷わずに選んでくれた事に視線を逸らした。
勘違いしそうになるのだ。フリックが思ってくれているのだと。
フリックは皆が認める色男。容姿だけではなく、前の軍から実力はトップクラス。幹部にまで登りつめて、その才を発揮している。
恐れ隠れ住んだナムダとは正反対に、今も果敢に戦へと出るフリック。後ろめたさに視線は青から逃げ出してしまう。
「ナムダ?」
「ああ。ごめん。本当になんでもないよ。」
フリックは、女の子が好きなんだ。男である俺を、ましてや呪われた紋章なんか受け入れるべきじゃない。自虐的なことは似合わないとわかっているのだが、恋とは人を変えてしまう。こんななよなよした思想の自分が情けない。
情けない顔を見られたくなくて。
正反対の貴方へ。どうか俺の魂を食らわないで。
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近づきたくても近づけない、もどかしさを書きたかったのです
珍しいナム→フリ
14.3.31
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