バレンタインですね。
犬飼と俺
「今日バレンタインだよ、ってことで。はい、チョコ」
「ん？ ああ……」
「あれ、反応薄くない？ もうちょっとリアクションあると思ったのに」
「……いや、犬飼は要求してくるもんだとばかり」
「えー、だって絶対そういうの気にしないでしょ」
「まあ、去年まではな」
「……へ？」
「ハッピーバレンタイン」
「え、……え、あ、……大好き！」
「飛びつくな」
実は用意していた小説家。
薄明のクチナシ
「またたくさん作ったねー。玉狛メンツだけでいいんじゃないの？」
「……」（ふるふる）
「だめなんだ。太刀川さんとかお餅あげとけば喜びそうなのに」
「……」（どやっ）
「ん？ ……え、もち入ってるんだこれ。こっちは……あ、みかんってことは、出水？ これはゲームのコントローラー型……うわ、すっご」
「……」（どうぞ）
「おれに？ ありが……ぼんち揚げ……？」
「……？」（好きなんでしょ？という目）
「あ、ありがと……」
「……」（爆笑中）
「ちょっ、からかったの！？」
ちゃんと手作り。
天邪鬼の恋
「エディブルフラワーっていうのがあって、その名のとおり可食の花なんだよ。それはそうとして出水、トリカブトとか食わない？」
「食わねーよ？ それ強毒性だろ、そんくらい知っとるわ！」
「ちっ。食えよそこは」
「死ねってか。ったく……」
「……そうだ、出水甘いの平気？ 別に苦手でもいいけど」
「じゃあなんで聞いたんだよおい」
「姉が大量にチョコ作って、あまったの消費させられてんだよ。出水も手伝え」
「あー、そうかバレンタインか……。いーぜ」
「じゃあ、とりあえずこれな。裏の冷蔵庫から持ってくるわ」
「あいよ。……あれ、これ既製品じゃね？ お姉さんが作ったやつなんだろ？」
「……なんでもいいから食えよ」
「お、おう……？」
なぜ既製品を真っ先に渡したのか。