すきなもの



「幸って家庭的だね」
教室で次の授業の用意をしていたら、目の前に彩花がいた。
驚いたが、いつもの事でもう慣れた。

「なにがだよ」
一応、俺は女が好きではない。
が、目の前に居るこいつは例外なようだ。

「好きな食べ物のはなしだよ」

「好きな食べ物?」
俺は作業をしている手を休めて言う。
彩花はうん、と頷いた。

「幸ってさ、肉じゃが好きなんでしょ?
あんまりいないよね、肉じゃが好きな人って」

「そうか?」
そうだよ! と彩花は即答した。
黒子のイグナイトパス並に速かった。
そうかよ、と俺は素っ気なく言って次の授業の宿題を始めた。

「……ねぇ、幸。差し入れ何が良い?」

「差し入れ? 部活のか?」

「そ。友達と作ろうって話になって……。
 主将の幸に聞こうってなってさ」

「その友達とやらの奴は、黄瀬目当てなんじゃねーの?
 だったら黄瀬に聞いた方が早ぇって」
そうじゃなくて、と彩花は段々と声を大きくさせながら言った。
なにが違うんだよ。そうだろ。

「わ、私は、幸の為に作るんだもん。
 だから、その、幸に聞いたんだよ」
さっきとは裏腹に、段々小さな声になりながら言った。
俺の聞き間違えだろう。そして、自惚れすぎだ。


「私ね、黄瀬くんよりも幸が好きなの」
彩花の言葉にビクリと反応した。
チラリと顔を見れば、彩花の顔は真っ赤だった。
……自惚れてるわけでもなさそうだな。
そう俺は確信した。

「……俺も、彩花の作った料理食いてぇ。
 彩花の作ったもんだったら、何でも良いぜ」

「え? あ……あぁ、ありがとう」
またチラリとみると、もっと顔が赤くなった彩花の姿があった。
それに対して、俺は、顔赤ぇぞ? と指摘する。
すると、分かってるくせに、と彩花は俺に向かって言った。


分かってるも何も……。


(俺も、お前と同じ気持ちだ)
(からかわないでよ……)
(マジだから)

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