女房も大変だよ

「あぁー! 樹のバーカ、バーカ!!」
二年生廊下。
そんな声と共に女の子たちの甲高い声が響く。


「はぁ」
隣の席に深いため息をついて座る彼。
そう、この彼こそがあの成宮鳴の奥さんである。


「アハハ、お疲れさま。多田野君」
私は声をかけた。
多田野君はどうも。と、笑っていった。


「大変だね」

「まぁ、そうだね。
 あの人ワガママだから。先輩たちもお手上げだって」

「でも、凄い人なんでしょ?」

「うん、そうだよ。
 あの人は凄い人なんだよ。なんだけどさ……」
多田野君は疲れたようで、机に突っ伏していた。
本当、お疲れである。


「大変だね、奥さんも」

「え、奥さん!?」
多田野君はガバッと起き上がった。
何か変な事でも言ったであろうか。


「え、うん。
 だって、バッテリー組んでいる人たちってそう呼ぶんでしょ?
 ピッチャーが夫。キャッチャーが妻って……違う?」

「え、あぁ……うん! そう言うよ!
 うんうん、そういうよ……うん」

「あ、ゴメン。
 多田野君、そう言うの言われるの嫌な感じだった?」
私はオズオズと聞いた。



「良いや、そういう訳じゃない。
 っていうか、宮本って野球詳しいんだね」


「え、そう!? 
 た、たぶん、友人のせいかなー。アハハ」
隣があなたになって、ちょっと野球に興味がわいたからですよ!


「そっか、じゃあ野球の試合を観に来ても退屈しないね。
 ルール分かってるから」

「うん、そうだね。
 だからさ……甲子園、連れてってよ」
私はニヤリと笑いながら言った。


「連れてって?
 連れていくに決まってるよ」
多田野君のその時の顔に、胸を打たれた私であった。

| #novel_menu# |
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -