薬指にくちびるを

右手の薬指に指輪を付ける。
彼と会う時は必ず付けるものだ。
これは、彼からの初めての誕生日プレゼントだったから大切にしていた。

それに、右手の薬指に指輪を付けているということは、恋人がもう居ますよという印だそうだ。
御幸君は彼は束縛するなー、とケタケタと笑っていたのを今でも覚えていた。
その時はよくわからなかったけど、今からしてみれば顔が赤くなるところだったなーと、自分の恋愛度の低さに驚いていた。

「彩花、指輪買うか?」
「ううん! これが好きなんだ」
変な奴だな、と嬉しそうに笑う彼。ポケットに手を突っ込んでしたを向いていた。
でも、私の右手を掴んでいたり、車道側をさりげなく歩いている彼。
それは毎回のことで、分かっていないふりをしているが、実際、その行動を嬉しく思っていた。
彼はなに食わぬ顔でそれをやっているが、その一つ一つの行動が私の心を締め付ける。

あ、そうだ、と彼は何か思い出したかのように立ち止まった。なに? と私は彼の顔を見た。

「彩花と俺が、大人になったらよー」
そのよー、あー、と言葉が見つからない様子だ。私は、口を挟まずに彼の言葉を待った。
突然止まったので、私が彼の一歩前に居るかたちになっていた。
意を決したのか、彼は真剣な顔で、ちゃんとした奴反対の手にもつけるからあけとけよ、と頭をかきながら言われた。

もっとくだらない話でもするのかと思っていた私にとって、その話は嬉しいの他何もなかった。

私は、反射的にうん、と頷いた。

彼は嬉しそうにおう、と笑ってくれた。
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