当惑のピエロ

自分でもよくわかっていた。でも、行動にうつせなかった。あれもこれも全部自分が悪いのはわかっていた。
まぁ、でも、後悔したところであの日は帰ってこないんだけどね。

「亮介は何でいっつも笑ってるの?」
「? 笑ってる訳じゃないよ」
「えー、そうなの?」
彼女の声が脳内に巡る。やめろ、止めてくれ。彼女を思い出したくないんだ。

「あ、ほら、彼氏のおでましだよ」
「……っ、うん。じゃあね亮介」
「うん、また明日」
あの瞬時の顔が今でも忘れたくても忘れられない。不安そうな声も、そして、少しだけ悲しそうな仕草も。
噂では彩花は俺のことが好きならしい。
でも、彼氏がいた。あれは断れなくてできた彼氏だと風の噂で聞いたことがある。俺自身も恋愛感情として彩花が好きだった。
いや、現在進行形だ。

「あぁ、なんでこうも素直になれないかな」
教室に響く声。
なんだか、情けなくて笑ってしまったのも覚えている。でも、これで良かったのだ。なにせ、今、あの日に戻れても俺は行動にうつせていたのかも危ういからだ。
俺には今の生活がちょうどいいのだ。
みんなで笑って、野球ができる日々が。
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