愛の取り方
「彼女様!」
私はその言葉に敏感だ。その声、言葉を聞くたびに私は彼のもとへと走り出すのだ。彼とは、そう、優のことである。
「ゆ、優! また沢村君が」
私は自分のクラス(B組)へ直行した。今の時間は、ちょうど昼休みで野球部(伊佐敷を筆頭に)がここで食べているのだ。
「また、沢村か! 亮介の弟は居なかったのか?」
伊佐敷は面白そうに言ってきた。こっちは真剣に悩んでるって言うのに! そう思っていると、優が後で言っておく、と申し訳なさそうに言った。
「沢村はバカだからね。デリカシーが無いんだよ」
「うがっ」
「まぁでも、そこがあいつの取り柄だからな」
「哲、それ誉めてんのか?」
伊佐敷のツッコミに全員が納得した。ただ一人を除いて。
「でも、沢村君のお陰で優の彼女なんだなーっていっつも実感できるから良いんだ」
私がそういうと、所々で舌打ちが聞こえてきた。
「彩花、そういうのは公共の場では止めてくれ」
「あ、ごめん」
私の周りでは全員が(結城以外)何かの呪文を唱えていたのは聞いていないフリをしておく。