風を起こせ

もじもじしていて、可愛くて、そんな彼だった。でもそれは、試合の時だけ……いや、野球に関するときだけは、180°違うようだ。

「ほら、次小湊君だよ! 彩花、応援しないと!」
「え、うあ……」
私はさっきから戸惑っていた。だって、あの春市君があんなにかっこ良かったんだもの。無理もない。何か、距離感じるなぁ、なんて思っていた時である。
「あ、春っちの彼女さんだ!!!」
沢村君!? 私は焦った。こんな大人数のいる場所でそんなこと言ったら、春市君が照れちゃって、試合できなくなっちゃうじゃん。だが、そんな心配も無かったようだ。
カキーンと、いい音がした。春市君が打ったのだ。レフト前ヒットである。
「お、春っちのガッツポーズだ!」
二塁では照れないでガッツポーズしている春市君が居た。まだ見たことのない彼の表情だった。何年間も一緒に居たのに、何で知らなかったんだろう。
答えは、少し考えればすぐわかった。
あぁ、そうか。私は知ってるフリをしてたんだ。
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