風に導かれて

好きな人とかは偽りで作っていた。友人にそれを気づかれないように私は照れながら別に好きでもない彼の話をする。

「ほんとに好きなんだね」
「えへへ」
こんなにも疲れる話題がどこにあるだろうか。きっと本当に好きな人が出来たらこの話題は凄く楽しいというまでランクアップするだろうな。

「あ、ほら、御幸君来たよっ」
「ほんとだ……」
学校が違う彼、名前は御幸一也。私が好きだといっている人物だ。特に理由もなく、私は彼を好きだと言い続けている。

「あ、ショートの倉持君だ」
「なんか怖そ―」
「元ヤンキーらしいよ? 沢村君が叫んでたもん」
周りの友人が倉持というやつの話をし始めた。まぁ、私はどうでも良いけど……。
ヤンキーでも怖そうでも野球を楽しそうにプレーしていれば私はどうも思わない。ただ楽しそうにプレーしていればそれで私は良かったのだ。
さてさて、私は友人と駄弁りながらせきに座る。サードの方に座っていて、青道側の席に座っていた。

「きゃー! 結城せんぱ―いっ!!」
隣でハシャグ友人。私は顔色ひとつ変えずに青道の練習を見る。

「次!」
その声と共にバットの芯にボールが当たる音がした。気持ちの良い音だ。
だが、そう思っているのもつかの間だった。先程までヤンキーだの怖そうだの言われていた彼がカッコ良かったからだ。
彼はショートで楽しそうにプレーしていた。
これだ。私は確信した。彼は野球が好きだと言うことを、心の底から野球が好きだと言うことを。

「倉持……」
私はトクンと胸が高鳴ったのに気づいた。あぁ、これだ。私が求めていた気持ち。私は顔が赤くなっていくのに気がついた。
さ―っと風が吹いたとき、何だか彼がこちらを向いたような気がした。
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