振り向けばマドンナ

野球部のマネージャーは可愛くて羨ましい。という言葉を最近よく聞くようになった。同学年の奴らによく羨ましがられるが、俺も自分自身、彼女とよく話したことがないのだ。
同学年で仲が良いと言えば、御幸や倉持辺りだ。
「御幸、監督が呼んでるよ」
「ん? あ、サンキュ。降谷、ちょっと走ってろ」
ブルペンにて。別に気にしなくても良いのに、気になってしまっていた。球を投げるのに集中したい。でも気になってしょうがなかった。自分が情けないと思い、球を投げるのをやめた。
「川上―」
「ゴメン、小野。ちょっと走ってくる」
そう言って俺はブルペンから出た。足を十分に伸ばして走り出す。みんなの練習の邪魔にならないよう、端をうまく走り抜ける。走り初めて何十分経ったのだろうか。息が苦しくなってきた。もうそろそろブルペンに戻ろうとしていた時であった。

「川上君」
優しい声が後ろから聞こえてきた。振り向けば、そう、あの有名な彼女がいたのだ。俺は同学年なのに緊張してしまった。心臓が先程よりも早く動いている。

「小野が心配してたよ? 何かあった?」
あなたが気になってしょうがないんです、と言えるわけもなく何でもないよと言った。

「何かあったら言ってよ? マネージャーとしてサポートしたいし」
「えっ……あっありがとう!」
声が裏返ってしまった。彼女はクスリと笑って、いえいえと言っていた。凄く可愛くて綺麗で見とれてしまいそうだった。

「あっ! 彩花先輩―こちらにいましたか! ささっ、お昼ご飯を食べにいきましょう!!」
突然、沢村率いる一年トリオが駆けてきた。彼女は、私は良いの、三人で早く食べてきなと言うとトリオ組はは―いと素直にしたがっていた。

「元気だな……」
「フフッ。元気すぎて午後練大丈夫かいっつも心配なの」
彼女の笑顔につられて俺も笑ってしまう。あぁ、なんか、この時間がずっと永遠に続けばな―とかガラにもなく思ってしまう。
「あ、川上君も。早く食べないと監督に怒られちゃうよ?」
「あ、ヤバ。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
手を振る彼女に振りかえす俺。心臓はまだ早い。ドクドクと動く。深呼吸をしても速さは変わらなかった。理由もなく彼女の方を見る。すると、ふんわりと笑っている姿がそこにはあった。
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