恋愛はいらない。
本当に野球部なのだろうか。私は彼を見た瞬間そう思った。いや、失礼なのはわかっている。だが、そう思わないやつはそうそういないだろう。
「ナベー」
「あ、うん。今回もあるよ」
「おっ! 流石やナベ!」
食堂は二年生の会話でうまっていた。私はナベ君、基、渡辺久志君の隣に座っていた。私は決して野球部ではない。だが、臨時で野球部の手伝いをしていた。そこで、ナベ君に出会ったのだ。
「ここ、ここだよ」
「確かにショート動いてんな」
「あ、倉持くんやっと分かった?」
「御幸、うぜぇ」
ハッハッハ、と声が響く。ナベ君も隣で笑っている。
「彩花、ごめんね。自分から呼びだしておいて」
「え、あ、良いんだよ。ナベ君の笑顔見れるだけで十分だから」
「彩花、かっこええこと言うな」
「へ?」
え、嘘。さっきのゾノ聞いてたの? ちょ、恥ずかしい。御幸も倉持もニヤニヤするな!
「彩花……僕も彩花の笑顔が見れて嬉しいよ」
「な、ナベ君!」
食堂にいる人たちが私たちを冷やかしてくる。私は顔が熱くなりすぎてどうにかなりそうだった。
「球児には恋愛とかいらんよな!」
「ゾノ、一体どうした」