計算高いは、怖い証拠

「多田野先輩お久しぶりです」
懐かしい声に俺は反応した。秋の大会は一回戦で敗退し、ライバル校の青道高校とは試合をできずに終わってしまった。
今日は決勝戦ということで見にきたのだが……。
「晋二! 背伸びたな!」
元チームメイトの赤松晋二。一つ下の後輩で凄く人懐っこい奴だ。こいつを恨む奴は相当居ないと俺は断言できる自信があった。(居るならば、そいつはひねくれ者)

「あ、先輩。今日は俺だけじゃないんです。……ほら」
先ほどから気にはなっていた。そう、晋二の後ろにいる子を。

「久しぶりです。い、樹く……先輩」
彼女がいた。え? なんで? 俺聞いてないよ?

「どうしても多田野先輩の制服姿が見たい―って言うから連れてきました」
「そんなこと言ってないし!」
そうだったっけ? と言う晋二に反抗する彩花。そしてすぐ隣では不機嫌そうな鳴さんの姿があった。

「あ、その……樹先輩! 制服似合ってます」
「あはは、ありがとう。彩花」
「っ、晋二―、樹君がカッコいいよ―」
「? 知ってるけど?」
後輩のやり取りが先輩方の耳に入っていると思うと、冷や汗が止まらない。また冷やかされたりちゃかされたりされると身の危険を感じた。

「あ、成宮さん。夏の大会凄くカッコよかったです」
「俺も甲子園観てました。尊敬する投手と早く一緒にプレーしてみたいです」
凄い良いスマイルで彩花と樹は言った。
「良い後輩だな、名前は?」
「宮本彩花です」
「晋二! 赤松晋二です!」
二人は良い笑顔で鳴さんに言う。鳴さんは満足そうにそうか、と言っていた。慕ってくれる人が居るとこうなるということを改めて知った瞬間であった。

「樹、良い後輩をもったな」
「は、はぁ……」
「なんだその態度! 少しは後輩を見習え!」
「……めんどくさ」
「なっ!? めんどくさい!?」
「ヤベ、つい心の声が……」
「きーっ! 樹のくせに!」
仕方ないじゃないですか。だって、前キャプテンが目に入ってしまったんですから。なんてことも言えずに、謝り続ける。あぁ、後輩の前でこんな姿みせたくないな……。

「多田野先輩をイジメないでください!」
「樹君をいじめないでください!」
バッと俺の前に出る後輩二人。鳴さんはポカーンと口を開けている。いつもの事だと俺は後輩の前に立って言う。近い、と一言言われた。

「過保護な後輩だな」
「ありがとうございますっ!」
「晋二、それ、褒められてないぞ?」



。。
| #novel_menu# |
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -