涙を拭いてあげるから。

「……宮本さん?」
グラウンドの周りをランニングして、戻ろうと思っていたらクラスメイトが視界に入った。別に話す用件は無いけど、話したい、顔を間近で見たい、とふいに思ったから話しかけた。本人は驚いた様子でこちらを見て、降谷君か……と微笑んできた。

「何してんの?」
「んー、思いを伝えるためにさ」
「御幸先輩?」
「ビンゴ」
そんなに分かりやすいかなー、と照れながら言う彼女。あてずっぽうで言ったら当たってしまっただけだ。とも言えず、頷く。彼女は顔を真っ赤にして、嘘だー! と言っていた。否定はしなかった。

「で、でもさ、御幸先輩ってモテるよね……。どう告白しよう」
「……普通で良いんじゃない?」
「そんな事! 普通って! む、無理だよ」
なんて言って、あたりを見回す。それを何回かしている彼女。もう、10分は経った気がする。もう戻ろうかとも思わずに僕はそのままそこに居た。

「もういい加減諦めたら? 告白できないならさ」
僕は言った。すると、彼女はめを丸くしてそんな簡単に恋は終わらせられない! と言われた。泣いてるの? と聞けば、泣いてない! と言われた。僕はなんか複雑な気持ちになった。彼女の泣いている顔を見ると、笑顔にさせたくなった。

「……御幸先輩じゃないとダメなの?」
「へ?」
彼女は一瞬で泣き止む。僕は大きく息を吸った。

「僕じゃダメ? 泣かせたりしない。約束する」
自分自身、何を言っているんだろうかと思った。けれども、過去は戻らない。言ってしまったには返事を待つしかない。彼女はまだ状況が把握できていないようだ。僕はそれでも無言で待つ。

「降谷君……? でも、わたしは」
「分かってる。でも、御幸先輩のせいで泣く君の姿は見てられない」
僕がそう言うと、降谷君が泣かせたんじゃない、と笑って言った。ほら、僕の事になると君は笑うんだ。

「返事は?」
「……本当に良いの?」
「うん」
頷くと、彼女は宜しくお願いします、といった。僕は嬉しくて、つい笑ってしまった。すると彼女は顔を真っ赤にして、反則! と僕に言ってきた。何が反則なのだろうか。春っちにでも聞いてみようか。




(は、る……小湊君)
(ん?)
なんていう事があったとか。

玉響様から。
心の表裏 からでした。
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