こうもなってしまうのか

「はいはい、鳴、樹君イジメないのっ」
去年の夏の準優勝校との試合前、そんな声が俺の耳に入った。それは俺だけではないようだった。
「あっちのバッテリー、まだ完成してないようだね」
隣で南朋が言った。俺はそうだな、と反応する。何かに気づいたのか、南朋は手加減は無しだからね。と笑顔で言う。当たり前だろ、と俺は言った。


*


ベンチに入れば、もう、向かいのベンチには先程の人が居た。成宮に向かって何か言っている。あ、笑った。
「梅ちゃーん、どこ見てんの?」
声がした方を見れば、皆がにやにやしていた。バレた。と、俺は焦った。けどその後、南朋の奴に集合をかけられたので、ひとまず、その場を乗りきった。
数分して、試合が始まった。挨拶のとき、成宮はこちらを睨んでいたので俺は笑った。
「梅宮、初回」
ベンチに戻れば、南朋に言われた。俺は、頷く。ピッチャーグローブを持って、いざ出陣した。いや、しようとした。不意に稲実ベンチを見てしまったのだ。そこには、こちらを見ていた彼女が居た。俺はどうしていいか分からず、目をそらそうとした。が、彼女はニコリと微笑んだのだ。俺は帽子をとって頭を少し下げた。良かったじゃん、と口々に言われたので俺は、うるせぇと言った。
多分、いや、俺はライバル校の奴にそういう気持ちを抱いてしまったようだ。
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