「名前ちゃんただいま」 「佐助。おかえり。」 任務の後に城へ戻ると、俺様を迎えに門まで来てくれる名前 久しぶりに休暇を取れた。だから、二人でどこか行こう。 遠出しようか、と言ってもこの前途中で名前ちゃん、任務で一緒に帰れなかった。 あの後文送っても返事しないし。 っていっても、結構前から文は返ってこないんだよね、名前ちゃんの字、俺様結構好きなのに。 「そうだ、団子とかはどう?」 「うーん。あんま腹減ってないから、いいよ俺は」 「最近名前ちゃん何も食べないなぁ。大丈夫?」 「だーじょうぶって。佐助はほんと、心配性だな。」 だって名前ちゃんのことだし、と付け足すと、なんだそれって返してくる。 そうだ、海行こうよ。 いいね、海。 じゃあ明日行こう。 賛成。 「名前ちゃん、今日も帰ってこないね」 「そっ…そう、だ、な…」 「何その慌て様。まさか真田の旦那も名前ちゃんに気があるわけ?」 「だ、断じて違うぞ。」 渡さねぇよー、と彼を肘で突く。 そうすると苦虫食ったような顔で青筋を立てる。気分でも悪いんだろうか。 「あ、そうだ旦那。今日俺様名前ちゃんと海行くから」 「そ、そそ、そうか。た、楽しんでくるが良い」 いつも旦那は俺様と名前ちゃんの話となれば甘くなる。 結構前は仕事をしろだのなんの言ってたくせに、急に甘くなるもんな。 「あ、佐助。遅いじゃねぇの」 「ははは、ごめぇん。団子買ってきた」 「わっ、まじかよ。ごめんなぁ…俺何も持ってきてねぇや…」 「いいって。ほら。食べよ」 二人で砂浜をゆっくり歩き、潮のにおいが鼻の奥をつんとくすぶる。 いつからか、彼から手を繋いでくることがなくなった。俺様は別に名前ちゃんと一緒にいるだけで幸せだからそれでいいけど、たまに寂しいと思う。 ちょっとすると、名前が足を止めて、海の彼方をみつめる。 「……きれいだね」 「うん。すっげー綺麗だな。」 二人で笑うと、急に息が苦しくなる。なんでだろうか、こんなの初めてだ。 名前が座る。だから俺様も座る。 今日くらいはいいだろう、と自分から名前の手を握る。抵抗はされなかった。 潮風が涼しいのだろうか、名前の手が嫌なほど、冷たい。 「お?真田の忍じゃねぇか。海になんの用でぇ」 後ろから声をかけられたかと思えば、鬼の旦那だ。 正直言って邪魔なんだけど、どうしてくれる。 「…ちょっと、邪魔しないでくれる?」 「邪魔ぁ?なんのことだ?」 「ほら、名前ちゃんも何とか言って…」 振り返るけど、誰もいない。 「名前…?あっ、ああ…わ、悪ぃな。邪魔しちまってよ…。お、俺ぁ帰るぜ?」 名前ちゃんの名前を聞くなり、鬼の旦那は顔を青くして俺様から離れる。 「ねぇ、名前どこ行ったか知らない?」 「へ?」 「鬼の旦那はさっきまでそこにいたんでしょ?それなら最後に名前がどうしたかくらいは」 「わ、悪ぃ…その…知らねぇ…み、見てなかった」 みんなしておかしいよ。 鬼の旦那も俺様にこんな甘い言い方はしないはず。 なんだよ、と先ほどまで名前がいたところを見る。 足跡がない。 「ねぇ、鬼の旦那。」 「なっ、なんだぁ?」 「俺様って、狂ってる…?」 境界線 (君の手を握ってたはずの右手が) (ただただ、泥と化した砂で汚れてただけだなんて。) ――――――――――――――――― パーマネント野ばら見ました。 すごくいいと思いましたよ、皆さんもよければ観てくださいね。 20110829 prevnext |