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君の笑顔が俺を殺す     




初めはただスネイプに嫌がらせをしたかっただけだった。あいつと仲良くするなんて有り得ねえ、それだけの理由でFirst nameに関わっていた。俺の誘いを断ったのも珍しかったし、大抵の女は俺を選ぶ自信があったから尚更。だけど、いざ話してみると物事をはっきり言うし、媚びてこねぇし、気を使う必要がなくて楽だった。スネイプに肩入れしてるのは気に入らねえけど。今日も適当に近寄ってきた女達と遊んでから寮に戻った。俺の見た目と家柄しか見てねえ女達との会話は薄っぺらでとてもつまらなかった、ならなんで止めないのかって前リーマスに言われたけど自分でも分からないんだから仕方ない。部屋に戻った時にはジェームズ達はもう眠っていて、俺も眠りにつこうとしたが一向に睡魔がやってこなかった。談話室で本でも読んでるか、そう思って談話室に降りたもの読む気もしねえ。ただ窓から見える夜空を何も考えずに見ていた。


「あれ、シリウスくん?」


背後から聞こえた声にビクッと驚く、振り返ればそこにはパジャマ姿のFirst nameがいた。安堵で思わず笑みが溢れる、他の奴にこんな沈んだ姿を見られたくない。だけど、彼女になら不思議と見られてもいいと思った。何故かは分かんねえけど。


「First nameも眠れないのか?」

「うん、だからココアでも飲もうかなって。」

「ふーん、じゃあ俺のもお願い。」

「うん。」


魔法でマグカップを呼び寄せFirst nameに渡す。あっという間にココアを魔法で作り、渡されたそれは程よい甘さで美味しかった。彼女を見ていると、昼間の事を思い出しまた苛立ってしまう。何で彼女はスネイプなんかと仲良くするのだろうか、リリーだってあいつを庇うし、あんな闇の魔術にハマってる陰険なやつを。


「スネイプと昼飯なんてつまんなかったろ。」

「何で?楽しかったよ。シリウスくん達は毛嫌いし過ぎて、セブルスの良さが見えてないんだよ。」

「お前こそあいつを知らないからだろ。」

「少なくともシリウスくんよりは知ってる。別に仲良くしてとは言わないけど、わざわざ突っかかりに来なくてもいいでしょ。」


こんな言い争いをしたい訳じゃねえのに、止まらない。なんでFirst nameはあいつの事になるとムキになるんだろう、まだ出会って二日しか経ってないだろうに。それとは反対に、俺らには当たりが強い時がある。


「何であいつの肩ばかり持つんだよ。」

「......そう見える?」

「ああ。」

「そっか。」


すると急にFirst nameは考え込み始めた。そういえば今日も何回かそんな事があったな、何を考えていたか聞いてもはぐらかされちまったけど。


「で、何で?」

「うーん、何て言えばいいか難しいなあ。わたしはただ皆が幸せで楽しく過ごして欲しいだけなんだよね、綺麗事に聞こえるかもしれないけどさ。それは、シリウスくんも同じだよ?」

「楽しく、ねえ......First nameがおれと付き合ってくれたら楽しいかもしんねえな。」

「思ってもない事言わないの!これだからモテ男は苦手なんだよ。」

「半分本気なのに。」

「それは冗談って言うんだよ。」


そう言ってクスクスと笑うもんだから、釣られて俺も笑えてきてしまった。あんな八つ当たり同然のような物言いをしちまったのに、はっきりと言い返してくる。First nameが言う、みんな仲良くっつーのは正直無理だし、綺麗事だと思う。だけど、言った時の表情がとてつもなく真剣で気になった。


「そういえば、さっき元気なさそうだったけど大丈夫?」

「あー、ちょっと沈んでた。」

「......シリウスくんも大変そうだもんねえ。」


気付いてくれた事に、嬉しさと少しの動揺を覚える。ついいつもの癖で笑って返したけど、上手く笑えていただろうか。彼女の方を見ると、なんだか困ったように笑っていた。そこから始まる沈黙、すると突然彼女が俺の頭をぽんぽんと撫でた。驚いて彼女の方を見れば、暖かい微笑みで俺を見ていた。目が合うと、ぱっと手を離し慌て始めた。無意識の行動だったのだろうか。


「ご、ごめん。なんか急に、撫でたくなって 。」

「別に構わねえよ、つかもう少し撫でて。」

「うん、」

「......なぁ、」

「何?」

「俺の事やっぱり苦手?」


ふと気になった事を聞けば、驚いて目をまん丸にしていた。意外とこいつ表情豊かだよな。


「うーん、今のシリウスくんは苦手じゃない。」

「どういう事だよ?」

「また難しい事聞くね、感覚的な問題だからなあ。今こうして喋ってるシリウスくんは好きだよ、でもたまに苦手なシリウスくんもいる。」


意味が分からない、そんな思いが表情に出ていたのか、「説明するのが難しいの!」とその表情に対する返事が返ってきた。まあ、一先ず俺自身の事は苦手っていう訳でもないから安心した。ココアも飲み終わったのだろうか、彼女が席をたった。


「それじゃあ、わたしもう寝るね。おやすみ。」

「ちょっと待てよ、」

ちゅっ

「な!?」

「おやすみー。」


自分でも何故彼女の額にキスしたかは分からねえけど、さっきの安堵のせいか思わず去っていく彼女の腕を引いてしまった。そしてそのまま 、身体が赴くままに行動してしまった。基本的には俺らと話してても、全く照れたりする事はないけど、顔近付けたり、額にキスするとちゃんと顔を赤くする辺り、俺の事はちゃんと異性として見てるって事だよな。彼女に見えないよう小さくガッツポーズをし、男子寮に向かった 。




君の笑顔が俺を殺す
(俺にやさしく笑いかけてくれたんだ!)



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