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教科書どおりにはいかないの 



記念すべきホグワーツでの最初の授業は、魔法薬学だった。シリウスくん達は文句ばかり言っていたけれど、わたしはそれとは反対にわくわくしていた。何故なら、魔法薬学はスリザリンとの合同授業だからだ。もしかしたら、セブルスと話せる機会があるかもしれない。少しでも彼との接点を作らないと、違う寮の彼とはこれっきりになってしまう。そんなのは絶対嫌だ、それに昨日列車で話していてとても居心地が良かったのも事実だ。ただ純粋に彼と仲良くなりたい、彼のリリーへの気持ちはもう痛い程分かっているから欲は言わない。友達としてで構わないから側に居たいと思ったのだ。


「First name、なんか嬉しそうだな。」

「そう?」

「うん、さっきからずっとニコニコしてる。」

「俺は最初の授業が魔法薬学ですっげえ憂鬱なのに。」

「シリウスくんは大袈裟だなあ。」


シリウスくん達と話しながら、地下にある教室へと向かう。今朝リリー達と朝ごはんを食べていると、隣にシリウスくんが座り流れで一緒に教室に行くことになったのだ。この頃のリリーと悪戯仕掛け人はあまり仲が良くなかったみたいで、リリーは申し訳なさそうな顔で先に行っててと別行動だった。彼女と行くべきか悩んだけど、変化が必要なのは悪戯仕掛け人の方と思い彼らと行くことを選んだ。苦手意識を持っていったシリウスくんとジェームズも話しやすく 、すぐ打ち解けてしまった。そういう所が彼等が人気者である所以だろう。みんなと話していると、遠くに感じた教室もすぐに着いてしまった。教室を見渡すと、ある程度席は埋まっていた。


「シリウスくぅん、アタシと一緒に座ろ!」

「ちょ、俺はFirst nameと……」

「ジェームズくんはこっちね!」

「え、僕は......」


シリウスくんは、甘ったるい声に甘ったるい香水をつけた女の子に手を引かれて行ってしまい 、ジェームズも同様に他の女の子の隣に座らされていた。いつの間にか、リーマスとピーターも席に着いており、気付けば席に座っていないのはわたしだけだった。周りを見渡し、隅っこの席に一つ空いてる席を見つけそこへ向かう。


「あの、隣いいですか?」

「あぁ、……ってFirst nameか。」

「セブルス!」

「これで二度目だな。」

「そうだね、セブルスと同じ寮になれなくてすごく残念だよ。」

「ああ、そうだな。」

「もっと残念そうな顔してくれると嬉しいんだけどなあ。」

「それは無理なお願いだ。」


せっかくセブルスの隣の席をゲットしたのに、相変わらずの塩対応にめげそうになるけど、めげずに声をかけたらくつくつと笑ってくれた。それだけでも、心が満たされた気がした。スラグホーン先生が前に出てきて、生徒全員が席に着いたのを確認すると授業を始める合図をした 。いざ授業が始まると、先程まではわくわくしていたのに緊張してきてしまう。


「今日は隣の人とペアになって、ある薬を作ってもらう!」


それを聞いた瞬間、お腹が痛くなるのを感じた 。魔法薬については勉強はしたけど、実際の調合はやった事がないから自信がない。黒板と教科書見れば出来るかもしれないけど、それでも全く想像がつかない。一人でやるなら失敗しても誰にも迷惑かけないけど、ペアだと違う。きっとセブルスに迷惑かけてしまうだろう、わたしなんかが誰かに迷惑かけるなんてだめなのに 。何故か急に頭に色んな映像が流れてくる、それはぼやけていてよく見えなかったけど見たくないものは確かだ。


「……」

「First nameは僕が頼んだ事をやってくれ。後は僕に任せろ、だからそんな不安そうな顔するな」

「ありがとう。」


気持ちがそのまま顔に出てたのか、セブルスはそう言って微笑んだ。その一言ですっと腹痛も頭の痛みも消えていってしまった。作業もやり方をわたしでも分かるように説明してくれて、簡単な作業を振ってくれたおかげで無事に調合は成功した。彼はわたしの表情の変化も見逃さず、作業中も気にかけてくれて、その優しさに涙が出そうになった。ハリーが生まれなくなると困るから、リリーとくっつける事は出来ないけれど。それでも振り返ってみていい学校生活だったと思ってもらえるようにしたい。余計なお世話かもしれないし、自己満足かもしれないけれど。彼の為なら出来る限りの事はしたい。


「やっと終わったー!」

「僕のおかげだな。」

「うん、本当にセブルスのおかげ!ありがとう!」

「……ああ。」

「First nameー!」

「あ、リリーが呼んでるからもう行くね。」

「またな。」

「うん。そうだ、今日お昼一緒に食べようよ。」

「どうせあいつらが邪魔するだろ。」

「それはあり得る。」

「……僕にいい考えがある。昼休みになったら中庭で待っててくれ。」

「分かった。リリーも誘っていいかな?」

「……僕は構わない。」

「ありがとう!じゃあ、また後でね。」


昨日リリーにさり気なくセブルスの事を聞いたら、最近話さなくなってきたとの事だったからこれをきっかけに少しでも二人が昔のように話せるようなったらいいな。でも、この行動は間違ってないだろうか。余計彼の気持ちが苦しくなったら、もし二人が急接近したら、一気に不安が押し寄せてくる。何れにしてもその時の最善の方法を探すだけだ、この世界にきたのも、この時代なのも、列車で彼に会えたのも何か理由があるはずなんだ。今わたしが望むものは、彼の幸せ。ただそれだけだ。






教科書どおりにはいかないの
(わたしができることをするだけ)



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