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不協和音に身を委ね     



ざわざわ

落ち着かない。周りは人、人、人ばかりで、背の低いわたしには高い壁に囲まれてるようだった。夕飯を食べ終え、シリウスくん達と寮へ着くと、あっという間にわたしの周りには人集りができた。おそらく珍しい編入生の上に東洋人だからだろうなあ、と内心苦笑した。

「なんで急にこっちにきたの?」

「ジャパニーズはみんな小さいの?」

「シリウスくんと知り合いなの?」

矢継ぎ早にくる質問に頭がくらくらしそうになる。こんな状況に慣れていないわたしは上手く答えることが出来ないでいた。どれから答えればいいのだろう、何を答えればいいのだろう。どうすればいいか分からなくなったわたしは、ただ愛想笑いを浮かべ質問を受け流していた。

「First name!」

こっちこっち、とシリウスくんは手招きをした 。「ごめんね」とそう言い、周りの反応を気にしないようにしながら、人波を掻き分けて向かう。きっとわたしの第一印象はあまり良くないだろう、だけどこのままこの状況下に身を置く余裕もなかった。シリウスくん達の所へ着くと 、ふうと一息つき今までいた場所を振り返る。見ると人集りはなくなっていた。

「大変だったね。」

「こんなに人に囲まれたの初めてで困ってたの、呼んでくれて助かったよ。」

『爽やかな好青年』という言葉が似合う男の子が先の状況に苦笑いしながら話しかけてきた。そして、「はい、これ食べると落ち着くよ。」そう言ってわたしにチョコを渡してくれた。お礼を言いチョコを受け取る、食べるとほんのり甘く気分もいくらか和らいだ。名前を聞かなくても分かる、聞き覚えのあるその台詞に所々に傷跡が残る顔、きっと彼だろう。

「そうだ、自己紹介がまだだったね。僕はリーマス・J・ルーピン。リーマスでいいよ、よろしくね。」

「うん、よろしく。」

差し出された手をおずおずと握る。するとニコッと微笑みかけてくれ、それはまるで周りに花が舞っているような錯覚に陥る笑顔だった。だけど、まさかここまで爽やかな好青年の雰囲気だとは思わなかった。

「改めまして、僕はジェームズ・ポッター。車内では印象悪かったよね、ごめん。あいつとは相性が悪いんだ。」

「相性が悪いなら近付かなければいいのに。」

「そうもいかないんだよ。」

肩をすくめて苦笑いする彼に、全て理由を知っているだけにそれ以上何も言う事が出来なかった。わたしが出来る事なんて数える程しかないだろうけれど、少しでも今の関係性を変えることが出来たとしたら結末も少しはいいものになるだろうか。

「あの、ぼ、僕はピーター・ペディクリュー。よろしく。」

「うん、よろしくね!」

そう考えていると、残りの1人が自己紹介をしてきた。彼の方を見ると、小動物のような可愛さがあり想像と全然違った。可愛いなんて、男の子に言うのは失礼かもしれないけれど。彼の将来を思うと何とも言えない気持ちになり、思わずわたしより少し背の高い彼の頭を撫でる。彼は動揺しながらも、困ったような顔をしてされるがままでいた。

「次はわたしの番だね。名前はFirst name・Family nameです。改めましてよろしくね。」






一通りの自己紹介が終わり、私は女子寮へ向かった。先生からもらった紙に書かれて部屋に入る、ここに来てから男の子達としか話していなかったから、少し緊張してしまう。友達は出来るだろうか、みんなと仲良く出来るだろうか。

「失礼します。あの、わたし今日からここの部屋でお世話になるFirst name・Family nameです。」

入ったと同時にそう挨拶すると、五人部屋の部屋には女の子が一人しかいなかった。他の子達はまだ談話室にいるのだろうか。その子は振り向くと、わたしの方へ駆け寄ってきた。その子は、深みがかった赤色の髪をして、綺麗な緑色の瞳をしていた。女のわたしでもドキドキとする位に可愛かった。

「あなたが編入生ね、わたしはリリー・エバンズ。よろしくね、分からない事あったら何でも聞いて!」

そう言って、彼女はわたしに抱きついてきた。すると、ふわりとラベンダーのいい薫りが鼻をかすめた。海外流のスキンシップとその香りでわたしは、どぎまぎして動けずにいた。初日に会いたい人達に会えるなんて、幸先が良過ぎる 。その点では組み分け帽に感謝しなければいけないかもしれない、もしスリザリンだったらこうも全員と知り合うことは出来なかったかもしれない。

「うん、ありがとう。」

「そういえば、寮の中の案内とかもう終わったかしら?」

「ううん、まだ。案内お願いしてもいいかな? 」

「それじゃあ、荷解きが落ち着いたら案内するわね!」

「うん、助かるよ、ありがとう!」

荷解きが終わり、グリフィンドール寮の中の案内をしてもらった。映画では談話室と男子寮しか描かれていなかったから、とても新鮮味があった。わたしが一々感動していると、リリーは楽しそうに笑っていた。あっという間に1日が終わり、ベッドに入って眠りにつく。目を瞑ると走馬灯のように1日にあった出来事が次々と脳裏に浮かぶ。今日一日で色々ありすぎた、わたしがいた世界では目立つ事もなく、目立つ人物と関わる事さえもなかった。良くも悪くも平凡だったのだ。





不協和音に身を委ね
(まさか、わたしがあの人達と一緒に過ごすなんて)



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