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初恋ドロップ        



嫌な夢を見た。それはFirst nameに無視をされる夢で、昨日の事もあってか現実味を帯びていて、寝起きは最悪だ。もしそれが正夢になりでもしたらとてもじゃないが、立ち直れそうにない。戻れるのなら昨日に戻って一日をやり直したい、途中までは完璧だったんだ。First nameに会ったら謝ろう、いくら彼女を助ける為だとはいえ、事故とはいえ、キスしてしまったのだから。いや、謝ったら失礼かもしれない 。何れにしても何かしら話しておかないといけない。例え、無視されるのだとしても。渋々ベッドから起き上がり洗面所へ向かった。バシャバシャと顔を冷水で洗うと、少しもやもやが消えた気がした。顔を上げて鏡を見れば、酷い顔の僕。昨日よく眠れなかったせいでいつも以上に、酷い。こんな顔の奴にキスをされたFirst nameは可哀想だ。でも、正直ショックだった。あの事故の後逃げるように走っていかれたから。まるで、拒絶されたようで。駄目だ、駄目だ、いつもの自分に戻らないといけないな。もう一度顔を洗い、気を取り直して談話室へと向かった。




談話室へ入るとそこでは嫌なざわめきが部屋中を満たしていた。陰湿で陰鬱なざわめきで、さすがスリザリンだなと苦笑いしてしまう。そのざわめきも僕の登場によってぴたりと止んだ。何かあったのだろうか、皆の視線が一斉に僕に集まった。彼等の侮蔑のような目つきからして 、良くない意味での注目という事が分かった。その時脳裏に昨日の出来事が過った、まさか、まさかな。あの時周りに誰もいなかったはずだ 。誰も見ているはずがない。誰も何も言わず僕を見ており、胸がぎゅっと掴まれたように痛んだ。何故誰も何も言わないんだ、誰でもいい、誰か教えてくれ。そんな僕の思いが通じたのか 、ルシウス先輩が憎たらしい笑顔で近づいてきた。

「ゼブルス、君も堕ちたものだな。グリフィンドールの、しかも得体の知れない転校生と付き合うとは」

頭を鈍器で殴られた気がした。僕は誤解されても構わない、でもFirst nameにとってはいい迷惑だろう。もしかしたら彼女の身にも同じような事が起きてるかもしれない。そう思ったら居ても立っても居られず、僕はまだ何か文句を言いたげなルシウス先輩を放置して走り出した。




走りながら彼女がいそうな場所を考えていた。魔法薬学の教室か、図書館か、色々心当たりはあるがどれも違う気がしていた。すると唐突に彼女の姿のイメージが頭の中に浮かび、思い当たる場所へ足を進めた。そこはよく僕とFirst nameが一緒にいた大きな木の下で、そこへ辿り着くと目の前には小さく体育座りをして顔を膝で隠している女生徒がいた。きっと、いや絶対にFirst nameだ。ここにいるのはきっと僕と同じ理由だろう。


「First name」

「……セブ」

「もしかして昨日の、」

「あー、うん。」


顔を上げた彼女の顔に涙の跡はなく、安心する自分がいた。だけど、その表情は悲しそうな困ったような笑顔で、見ているとズキズキと胸が痛んだ。どうすればいいのか、言葉の続きが思い浮かばなくて、ただその場に立ち尽くしていた。すると、First nameは自分の隣を叩き「まぁ、座りなよ」と呟いた。その言葉にまた安心してしまう。もし無視されてしまったら、もし僕と一緒に居たくなかったら。First nameの隣に腰を下ろし話し始める。


「悪かったな、僕と噂されて迷惑だろう?」

「そんなこと、ないよ。わたしの方こそ、ごめん。」

「何がだ。」

「セブは助けてくれたのに、逃げた。」

「あぁ、そのことか。」

「ごめん。」

「さすがの僕も傷ついたぞ。ブロークンハートだ。」


なんて、僕らしくないことを言ってみる。辛い時こそ笑え、ってどっかの誰かが言ってたな。少しでもFirst nameの気持ちが軽くなればいい、そう思って僕は無理矢理笑ってみることにした。ははは。すると、僕のものではない笑い声。隣を見れば、First nameが笑っていた。「セブがそんな事言うなんて」と。すると、今度は自然に笑える僕がいた。やっぱりFirst nameには笑顔が似合う。


「あのね、わたしセブとなら噂されても迷惑じゃないよ。セブはどうかは分からないけど。」

「え、」

どきり、心臓が跳ねた。

「わたしは好きだし。」


その言葉を聞いた瞬間、心臓がばくばくと音を立てるのが感じた。一体どうしてしまったというんだ僕は。First nameから視線を外すことが出来ない。じわじわとその言葉が胸に染み込んでいき、暖かくなっていく。


「あ、あの、友達として好きって事ね!」


彼女は自分が言った言葉に気付いたのか、慌てて僕の方へ向きそう言った。その顔は真っ赤で、きっと僕と同じ位に赤い。「もうわたし何言ってるんだろう。」そう言って彼女は両手で自身の顔を隠し、その間も彼女から視線を外す事が出来なかった。『友達として好き』その一言がチクっと胸に刺さった。この気持ちは前にも感じた事がある、それは確かリリーに……そこまで思い出して気付いてしまった。First nameといるうちにいつの間にか彼女に惹かれていた。リリーとたまに話していても昔のようにドキドキする事はなく、大切なのは今も変わらないがポッター達と居てもそんなに気にならなくなっていた。だが、代わりにFirst nameがブラックのやつと仲良くしてるのは気に食わない。あぁ、そうか僕はFirst nameが好きなんだ。







(お久しぶりです、恋心)



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