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なんて臆病なわたし!    




ぐるぐるぐるぐる。脳内に永遠かと思う程に木霊するその言葉はわたしに対する悪意の言葉ばかり。これ以上聞きたくなくて耳を塞いでも、頭の中に響くから意味を成さない。誰が言っているの?恐る恐る目を開けてみて見るけど、その人物達はぼやけていてよく分からない。目を凝らしてよく見てみると、それは自分自身だった。止めて、と叫んでみても止むことのない悪口と罵倒。なんで、なんで。そんな疑問が渦巻く。その時、何処からかわたしの名前を呼ぶ声がした。その声の方向へ向くと手が伸ばされていて、わたしは迷わずにその手を取った。その瞬間、目の前が真っ白になっていった。




目を開けるといつもと変わらない天井がそこにあった。この世界にきてからは今朝見たような悪夢は見ることは減ってきていたのに、また逆戻りなのだろうか。身体をゆっくりと起こし、しばらく見た夢のことを考える。昨日の事があったから見てしまったのだろうか。すると、突然ぶるっと寒気がしてきた。何気なく首筋を触ってみると寝汗がたらりと垂れてきていた。タオルで身体を拭きながら、洗面所へと向かう。顔を洗ってもあまり気分はすっきりしなかった 、何なんだろうこ胸のざわつきは。部屋にはわたし以外に人はおらず、急いで制服に着替えて談話室へ向かう階段を降り始めた。談話室が近くにつれて大きくなる騒ぎ声。何かあったのだろうか。談話室に入ると、すぐそこにリリーが不機嫌そうな顔で腕を組んでいた。


「リリー、この騒ぎは何なの?」

「First name、あなた今ここに居ない方が……」

「お、噂をすれば本人の登場だ!」


これは嫌な盛り上がりだ、きっとろくな話題ではないのだろう。リリーの元へ向かい一体何が起きてるのか聞こうとしていたら、わたしに気付いたジェームズくんによって邪魔されてしまった。彼の声を合図にみんなの視線が一斉にわたしの方へと集まり、あっという間に囲まれてしまった。ぞくり、まただ。背中に寒気が走る 。これはきっと昨日のことが原因だろう、誰にも見られていないと思ったのに。


「ねぇ、スネイプとキスしたって本当なの?」

「二人は付き合ってるの?」

「なんでスネイプなの?」

「Family name、グリフィンドールだろ。なんでスリザリンの奴なんかと……」


わたしを囲んだかと思うと一斉に始まる質問攻め、わたしが何も言わずにいても気にせず、質問の雨が降ってくる。まるで談話室に来た初日のようだ、あの時は助けてくれたけれど今は周りには助けてくれる人はいない。辺りを見渡してみるけど、リリー達はいない。きっとこの人混みの中の何処かにいるのだろうけど、人が多過ぎて分からない。振り続ける質問の雨に窒息しそうになる、耳を塞ぎたくても上手く身体が動かない。早く何か言わないと、誤解されたままだ。昨日の出来事をよく知らないくせに、セブの事知らないくせに、わたしの事だってろくに知らないくせに、好き勝手言われたままは嫌だ 。スリザリンというだけで、表面上の彼しか知らないのに、彼の悪口を平気で言うみんなも嫌だ。


「全部事実だけど、あれは事故だった。もうわたしの事は放っておいて!」


勇気を振り絞ってそれだけ言うと、周りの反応が怖くて、この場にいるのが居たたまれなくて 、思わずこの場から逃げ出してしまった。みんながわたしを呼んだ気がしたけど無視して走り続けた。寮から出ても走り続けた。行き先は決めていない、すれ違う人が驚いてこっちを見ても気にしなかった。ただ、ただ、この場から逃げたかった。




なんて臆病なわたし!
(にげることしかできないなんて、)




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