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嗚呼、なんて卑しいぼく   


最近僕の身体の様子がおかしい。体調が悪いだとか、何処かが痛いと言うことはないが何かがいつもと違う。突然襲ってくる胸の痛み、その痛みも不思議なものでチクチクしたりムカムカしたりと、今までにない痛みだ。いや、First nameと出会う前にも度々あったが暫く落ち着いていたというのに。今度は以前よりも増して苦しい。何か悪い病にでもかかってしまったのだろうか。今度またその症状が出たら、マダムポンフリーに診てもらおう。その痛みのせいで読書に集中出来なくなり、本を閉じて空を見上げる。憂鬱な気分の僕を嘲笑するかのように、雲ひとつない青空でますます気分を落ち込ませる。5年生になってから一人で昼休みを過ごす事がなかったが、ここ数日は前に戻ったように一人静かに過ごしている。それが好きだった筈なのに、今は寂しく感じている。First nameがホグワーツにきてから、寮は違えど一緒にいる事が多かったのに、最近は僕の大嫌いなポッター達とつるむ事が増えていた。特に最近はブラックと仲が良いみたいだ。ムカムカと胸が痛みだし、胸を抑えて縮こまる。僕はこのまま誰にも気付かれずに死ぬのだろうか。


「セブ?」

「……First nameか。」


心配そうな声が僕の名前を呼び、俯いてた顔を上げる。そこには同じように心配そうな表情で僕の顔を覗き込むFirst nameがいた。彼女の顔を見た瞬間すっと痛みは引いていった。彼女は僕の隣に座り込み、背中を撫でた。そこから暖かさが全身を包み込み、気分が良くなっていった。


「苦しいの?」

「いや、もう治まった。ありがとう。」

「良かった。すごく苦しそうだったから、心配したよ。何かあったの?」

「最近急に苦しくなるんだ。」

「何かの病気かな?医務室行く?」

「大丈夫だ、心配してくれてありがとう。」

「そんな素直なんてやっぱり変......痛っ!」

「失礼だな。」


僕が大丈夫だと言えば、ホッと安心した表情で笑った。その顔を見ると先程まではムカムカしていた胸がドキドキし始めた。素直に礼を言うと、今度は驚いた表情をするもんだからデコピンをしてやった。すると、額をさすりながらも「やっぱりいつものセブだ。」と笑うから僕もつられて笑ってしまった。一人の時間も好きだが最近はこっちの方が好きだ。他愛もない話もただ目の前にある景色を眺めるのも、どれも彼女がいると楽しく感じる。だけど、First nameの一言でまた僕の心が掻き乱された。


「……でね、シリウスくんが、」


ピキッ、と何かが軋んだ気がした。僕の中の何かが、音を立てながら崩れ落ちた。その正体が何かは今の僕はまだ知らない。


「またブラックか。」

「……急にどうしたの?」

「最初は苦手だとか言ってたくせに、」

「セブ?」

「最近は僕よりブラックとばかりいいるじゃないか。」


ハッと我に返り自分がたった今言った言葉に動揺する。いつもは考えて発言していた、だが今は考えるより先に口に出てしまった。口をつぐむも発した言葉は消える事はなく、顔が熱くなっていくのを感じる。僕は何を言ってしまったんだ、後悔の波が襲い彼女の反応が怖くて俯く 。しばらくすると、彼女の方からクスクスと笑う声が聞こえてきた。


「ねえ、もしかしてやきもち妬いてる?」

「……そうだ。」


その一言で今までの胸の痛みの理由がすとんと腑に落ちた気がした。嫉妬していたんだ。ポッターに、ブラックに、グリフィンドールのやつらに。数少ない友達を横から奪われた気がして 。顔の熱は未だ引かず、その顔を見られたくなくて膝に顔を埋める。頭を撫でられ、腕の隙間から彼女を見ると嬉しそうに笑っていた。


「わたしにとって最優先はセブだからね。」

「......僕も、僕にとっての最優先はFirst nameだ。」

「なんか、言われると照れるね。」

「あぁ、そうだな。」


顔を上げて、彼女の顔を見ると僕と同じように顔を赤くしていた。さっきまでムカついていた青空も、彼女と見ているととても綺麗に見えた。







嗚呼、なんて卑しいぼく
(ずっとこの時間が続けばいい)




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