報われないことは初めから分かっていた。分かっていたけど、行き場のないこの感情をどうすればいいかは分からなかった。
「ななこーひまー」
「シャチさん」
「さっきからずっと何見てんだよ」
「えっ!それはですね、そ、空を見てたんです。」
「......へぇ、空ねぇ」
「そ、そう空です!」
嘘をつくことに慣れていないのか、上手に隠せていない。視線は色んな所に動くわ、歯切れが悪いわで。それじゃあ、わたしは嘘ついてます、って言ってるもんだっつーの。それがなんだか新鮮で思わず笑みが溢れた。だけど、ななこの視線の先がキャプテンと分かるとおれの表情は途端に曇ってしまった。
「シャチさん?」
「......」
「あのー」
「え、あ、何?」
「何って、シャチさん急に黙っちゃうんですもん」
「あー悪ィ悪ィ。晩飯の事考えてたからよー」
「ははは!まだお昼食べたばかりなのにもう夕飯のこと考えてるんですか?」
普段からサングラスをかけてた事に今程感謝したことはないだろう。きっと、おれが何を考えていて、どんな表情をしているかなんて、彼女は知らないだろう。いや、知らないままでいいんだ。困らせたくはないから。
「やっぱり変です」
「どこも変じゃねぇよ」
「...そうですね。ごめんなさい」
「別に謝る事はねぇよ」
「......」
違う。違う。そんな顔させたくないのに。困ったような、自虐的な笑い。おれってとことん馬鹿。
「あーーーーーー!」
「しゃ、シャチ、さん?」
「何かよー叫びたくなっちまった」
「どんな心境なんですか」
そう言ってくすくす笑った。そう、この顔。初めて会った時に見たあの笑顔が忘れられなくて、それからずっと笑わせようとしてたっけ。だけど、あまり笑ってくれなくて。
「叫ぶと気持ちいいぞーななこも叫んでみろよ」
「嫌ですよ、恥ずかしい」
「騙されたと思ってやってみ」
「......ばーかーやーろー!」
「ばかやろーってお前」
「確かに気持ちいいですね!」
そう言っておれの方を見たななこの顔は、臭いセリフかもしんねーけど、太陽みたいにキラキラ輝いてた。触れたい。理性がストップをかける前に、おれの手はななこの頬を撫でいた。おれ、やっぱりこいつが好きだ。
「すきだ」
口ではそう言ったつもりだけど、音は声は出なかった。たった3文字さえ伝えられないおれは臆病者。
手を
繋ぐことってこんなにも
難しい
戻る 進む