気付くとわたしは真っ暗な場所にいた。叫んでも叫んでも、声は届かない。走っても走っても、抜け出せない。手を伸ばしても、空を掴むだけ。泣きたくても、涙は出てこなかった。諦めて、身体を縮めて顔を膝に埋めて座りこむ。すると、突然わたしの名前を呼ぶ声がした。顔を上げれば、窓を開けた後のような青が見えた。声はそこから聞こえる。手を伸ばすけど、全く届かない。何回も伸ばしていると、急に手を掴まれて、目の前は真っ白になった。
「あれ、ここは」
「やっと起きたか」
「わたし、あの、ごめんなさ痛っ」
「まだ回復した訳じゃねえんだから、起き上がるな」
目を開けると、そこは自室だった。なんでわたしはここに?その答えは声をかけてきた人物の顔を見て分かった。視線を横に向けると、ほっとしたような顔をしたローさんが椅子に座っていた。そうだ、わたしは海賊にやられて連れて行かれそうになって、それで、それで、それで。
謝らなきゃと、勢いよく起き上がったのがいけなかった。お腹辺りに、激痛が走る。それを見たローさんは優しくわたしをベッドに横たわらせた。
「ローさん、ごめんなさい」
「何がだ」
「迷惑かけてしまって」
「迷惑をかけられた覚えはないが」
「だって、」
「仲間を助けるのは当たり前だ」
仲間、か。なんだかくすぐったい言葉だなあ。家族、友達、仲間。わたしには一生出来ないと思っていたもの。思わず笑みがこぼれる。突然、頭に感じる手の感触。どうやら、ローさんがわたしの頭を撫でているようだ。
「無事でよかった。もっとおれが早く気付いてれば...」
「そんな!わたしも油断してたから...。でも、本当に助けてくれてありがとうござます。」
「あぁ。」
その表情がいつもと違うもんだから、何だか恥ずかしかった。毛布を頭から被りたい位だ。顔が熱い、心臓の音がうるさい、一体わたしはどうしてしまったのだろう。
「フッ。まあ、ゆっくり休め」
「あ、の!」
「なんだ」
なんだ、そう言われて気付く。わたしは何で彼を呼び止めたのだろう、何で出て行こうとする彼の腕を掴んだのだろう。一人になりたくなかっから?側にいて欲しかったから?いずれにしても、わたしらしくない。らしくない、けど。
「もう少し此処にいてくれませんか?」
「!」
恥ずかしくて、彼の顔を見ることが出来なかった。申し訳なくて、彼の顔を見ることが出来なかった。だって、よく考えたらまた迷惑かけてるじゃないか。彼だって、やること沢山あるだろうし。そう考えたら、泣きたくなってきた。自分の、ばか。
「ななこが寝るまでいてやるから、そんな顔するな」
「ありがとう、ございます」
そう言って、ローさんはわたしが眠るまで手を握って側にいてくれた。今度はあの嫌な夢を見ることはなかった。
しょっぱい
液体はただ地に ちて
落
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