×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

一緒にいっていいですか     



重苦しい無言の状態が続く。オークション会場から出て、わたしを買った男の人の船の前にわたしとその場にいた3人と一匹が何も言わずに立ち止まっていた。わたしはこの空気に耐えられず俯いていた。この無言の状態を壊したのはキャスケット帽の男だった。


「こいつが強いのはおれも見たんで分かります。戦力になることも。だけど2億ベリーって!」

「今回はおれもシャチと同意見だ。今、そこまでおれ達が余裕がないのはキャプテンも分かっているだろう?」

「…この船のキャプテンは誰だ?」

「……」

「おれだ。文句ある奴は…「あの!」……なんだ」


ますます酷くなる険悪ムードに耐えかねて、わたしは思わず声を上げてしまった。キャスケット帽の人とペンギン帽の人たちは、2億ベリーで買ったことが不満なのだろう。ならば、今まで貯めてきたお金を渡せばこの状態から抜け出せるのではないか。わたしが自由になった時に使おうと思ったけど仕方がない。あの下品な赤ら顔に買われなかったお礼だと思えばいいんだ、そう自分に言い聞かせキャプテンと呼ばれる男に声をかける。


「あの、今お金のことで揉めてたんですよね?だったら、2億ベリーはさすがにないけれど少しはあるので・・・それ使って下さい。わたしの秘密基地に隠してるので、着いてきてください。」


そう言ってわたしは秘密基地へ向かって歩き出した。後ろで誰かがキャプテンと呼ばれる男の人に、危ないですよとか罠じゃないんですか、って言われてたけど無視して着いてきてくれていた。言われてみれば、いくら首を嵌めているとはいえ見ず知らずの人間に、よく着いて行けるな。お金の為か、はたまた下手をしたとしてもわたしを爆破する事が出来るから気にしないのか、それとも信用してるのか。
わたしはキャプテンと呼ばれる男の人が気になってしょうがなかった。そもそも何の為にわたしを?戦闘員として?かっこいいから女の人には困らないだろうし。何れにしても、わたしに2億ベリー支払う価値はこの人にとってあるの?そう考えていたら、いつの間にか秘密基地に着いていた。


「少し待っててください」


大きな木下の根本から3歩歩いた所を素手で掘る。いつもは身につけていたナイフをシャベル代わりにして使っていたけれど今はない。1人で掘っていると、隣でもう1人掘りはじめた。


「おれも手伝う。」


 隣を見るとキャプテンと呼ばれる男の人が。


「そ、そんな悪いです!手、汚れちゃいますし!」

「それはお前も同じだろ」

「わたしは...奴隷だからいいんです。」

「……。」


本当にこの人が何を考えているのか分からない。手伝ってもらうの悪いから、止めたのに黙々と掘っている。続けて他の人達も手伝い始め、すぐ木箱が土から顔出した。それを取りだし、渡す。


「せっかくだがこれは受けとれねえ。お前が持っておけ。いつか使う日が来るだろ。」

「え……?」



わたしとキャプテンと呼ばれる男以外の人達が同じように驚きと疑問の声をあげる。差し出した木箱は誰に受け取られるでもなく、わたしの手に収まったままだった。


「ちょ、キャプテン何言ってるんすか!?せっかくだし貰っ……」

「いらねえ」

「どうして……」

「おれがお前を買ったからだ。別にお前が買ってくれと頼んだわけじゃねぇ。違うか?」


間違ってはいない。だから、それ以上反論する者はいなかった。キャスケット帽の男だけが何か言いたげな風だったが、キャプテンと呼ばれる男に睨まれ押し黙る。わたしは何だか不思議な感覚に襲われた。この男はやっぱり何かを企んでいるのだろうか、だとしたら何を?考えても結論が出てこなかった。


「そうだ、忘れてた」


船へと戻ろうとしていたその男が何かを思い出したように此方へ向かってきた。そして、おもむろにポケットから何かを取り出し、わたしの首に触れる。わたしは反射的に目を瞑る。ピピピ。首輪から機械音が鳴る。爆発する!そう思い、怖くなってがたがたと震えだす。


「キャプテン何してるんですか!」

「おい、逃げるかもしれないぞ!」

「キャプテン?」


それぞれが別々の言葉を発する。共通してるのは、焦りと驚きの声。目を瞑っているわたしは、彼らの表情を見ることが出来なかった。ピー、がしゃん。突如、機械音が止んだと思った瞬間、首の圧迫感がなくなっていた。おそるおそる目をあけ、首もとに触れる。


「……ない」


足下を見れば、長年わたしの首につけられていた首輪。目の前を見ればにやり、と笑う男と呆れたような顔した男たち。何があったのか信じられなくて、ただ呆然と立っていることしか出来なかった。


「おれはお前を奴隷として使う気はねえ。逃げてえなら逃げればいいし、着いていくっていうならそれも構わねえ。」


好きにしな。そう一言残し、船舶している場所へと戻っていった。それに続いて残りの二人と一匹も戻っていった。キャスケット帽の男を此方をちらちらと気にしていたけれど。残されたわたしは、またも信じられない状況に呆然と立ち尽くしていた。あのひとの目的はなんだったのだろう?逃げるかもしれないのに、首輪を外し、しかも逃げてもいいだなんて。ただの無駄遣いじゃないか。なんで、なんで、その問いばかりが頭をぐるぐる回る。気づけばわたしは、涙を流していた。まだ泣けるくらいの感情あったんだ。これは安堵からきたものか嬉しさからきたものなのかは分からないけど、胸がぽかぽか暖かった。わたしがこのひとに着いていったのは言うまでもないだろう。





一緒にいっていいですか





戻る 進む