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理由なんてない出会い      

毎日毎日好きでもない戦闘の繰り返し。賞金を稼いでも、罵られる。褒めても、認めてもくれない。逃げたいのに逃げれない。家族のはずなのに、わたしは人間以下。いつか自由になれることを夢みて、稼いだお金から少し自分のお金として木箱にしまい、誰にもバレない自分だけの秘密基地に隠す。後は全て親という名の飼い主に渡す。どうしてこうなってしまったのだろう、数年前まではわたしは人間だったのに。目を瞑り思い出そうとするが、何気なく触れた首に填められた首輪にぶつかり、現実に戻る。もうどうだっていいことか、過去のことなんか。今わたしが考えるべきことは目の前の海賊を倒すこと。ただそれだけ。


「ごめんなさい」


わたしは手に力を集中させ、相手の心臓に向け手の平を当てた。その瞬間、名前も知らない海賊の全身に電気が走り白目を向いて倒れた。それを見た周りの仲間と思われる奴らは一気にわたしに襲いかかってきた。全く容赦ないな、女のわたし一人に大の男が大勢でかかってくるなんて。全神経に力を流す、わたしの身体から電気が放出され始めた。きっ、と海賊たちを睨みわたしは走り出した。


「意外と楽勝だったな」


気付けばわたしの周りには白目を向いて倒れている男たち。わたしは無言でそれを見て、ショルダーバックから手配書の束を取り出す。倒れてる海賊達と手配書を見比べ、懸賞金が高い人達を引きずり海軍の基地へと向かいはじめた。





その戦闘を見ていた人物が三名と一匹。ひとりは隈の目立つ男、ひとりはキャスケット帽にサングラスの男、ひとりはPENGUINと書かれた帽子をかぶった男、いっぴきは二足歩行の白くま。各々驚いたような、感心したような表情で見ていた。白くまが隈の目立つ男に話しかける。


「ねぇキャプテン、さっきの子も能力者なのかな?」

「だろうな」

「それにしても、一人でよくやるよなー」

「シャチ、お前より強そうだったな」

「酷い言いようだな、ペンギン」

「事実だろ」

「首輪、ついてたな」

「え?なんの話?」

「あぁ、可哀想だな。あんなまだ子供に」

「人間はそんなもんだ」


隈の目立つ男は、すっと立ち上がり海岸の方へ向かって歩き始めた。その後に残りの二人と一匹も続いた。




がらっ。ドアを開け、自分の部屋と言えるのか分からない小部屋へ向かう。すると、後ろから声をかけられ、びくっと肩を震わせ振り返る。


「今日はどれくらいだ?」

「合計5000万ベリーです」

「そうか」


いつも通りにお金の入った袋を渡す。親だった人は、わたしの顔を見ようともしないで袋をわたしの手から奪い取る。数年前までは、そんなんじゃなかったのに、優しかったのに、人間として家族として接してくれたのに。なんて過去を思い出して涙がこぼれそうになるのを耐えながら、親だった人に背を向けた。


「ななこ」

「……!」


数年ぶりに名前を呼ばれた気がする。もしかしたら、昔みたいに戻れるかもしれない。そんな甘い期待が頭をよぎった。だけど、その期待は次の言葉に裏切られた。


「すまない、おれは反対したんだが、あいつがもうお前の顔見るのも嫌だと言うんだ」

「出てけと?」

「いや、人間オークションに出すそうだ」

「今、なんて……」

「すまない」

「……」




頭が真っ白になった。あの人は何処までわたしを苦しめれば気が済むんだ。お母さんが出ていって、あの人と娘がやってきて、悪魔の実を食べてしまった、わたしのことが気にいらない、怖い、危ないと言って、寝ている間に首輪をつけられ奴隷として扱われて。ひたすらあの人たちのお金を稼いで、貯まったらもう用済みさようなら。しかも、最後の最後までわたしを金儲けの道具にするんだね。もう、どうでもいい気がしてきた。


「わかった」










人間オークション会場―…


周りは辛気くさい顔した人ばかり。隣にいる綺麗な女の人はその顔を崩さず綺麗に涙を流してる。反対側にいる海賊風の男は、だらしなくがたがた震えている。わたしは無表情に前を見据えていた。きっと、いや、絶対に両脇にいる人たちの反応の方が当然だろう。これから自分が売られるのだから。下手したら死ぬより辛い人生を送るかもしれないのだから。ふと横を見れば、係りの奴らに綺麗な女の人は連れられて行ってしまった。


「次はわたしの番か、ははは」


真っ暗な天井を見上げ笑う。別に面白くも楽しくもないけど、なんだか自分の人生が馬鹿らしくなってきて、笑いが込み上げてきた。がらっ。係りの奴らが牢の中に入ってきて、わたしに繋がっている鎖を引いた。


「エントリーNO,15!ななしの家の用心棒兼海賊狩りのななこ!ビリビリの実の能力者です!幼い外見とは裏腹に海軍からも一目置かれている少女です!能力者ということで、3000万ベリーからどうぞ!」

「5000万」

「7000万!」

「1億ベリーだ!」


正直驚いた。わたしごときの人間が、こんな高額な金額つけられるとは。誰だろう、そんな物好きは。そう思って視線を床から観客、落札者へと移す。赤ら顔で下品な笑みを浮かべる大男。ぶるり、いやだ。嫌な予感がする。戦闘ならいくらでもやる。でも、それ以外は……


「1億ベリー以上の方はいますでしょうか?いなければこれで……」

「2億ベリーだ」

「に、2億ベリー!それ以上はいますでしょうか?いないようですので、2億ベリーで落札!」

会場の誰もが言葉を失った。事実、わたしも驚きで息をするのも忘れてしまった程だ。はっ、として落札者を見れば先程の男とはうって変わって、若くてかっこいい男の人だった。その人はわたしと目が合ったかと思うと、にやり、と笑った気がした。




理由なんて無い出会い




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