名刺SSのログ
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むしゃくしゃした気持ちでお菓子を作るのはあんまり好きじゃない。でも、こればっかりは、ねえ。「あの、凛月くん…」「なーに」自分でもちょっとびっくりするくらいに不機嫌な、拗ねた声が出ていた。ワンテンポ遅れて、小さな笑い声が転がる。子供みたいって、それ、いい歳した男に言うセリフじゃないと思うんだけど。「ごめんね?」「んー、誠意が足りない」「血はダメだよ」「新作の感想で許してあげよう」カシャン、と泡立て器をボウルに当てた。ひきつる笑みを見て少しだけすっきりする。約束だよ、とにっこり笑って念押しして、紫色のメレンゲ作りを再開した。

お菓子製造機 / 朔間凛月







乾いた唇同士がすり合わされる。あ、の形に口を開けた凛月くんが、ふと何か思い出したように動きを止めた。ブレザーのポケットを探って、出てきたのはリップクリーム。持ってるんだ、意外、と感心していたら顔に手が添えられて、唇に押し当てられた。辿々しい手つきについ黙ってしまう。
「いただきまぁす」
潤ったばかりの唇を、かさついたままの唇がやわく食んだ。

リップクリーム / 朔間凛月








貸して、と奪われたそれは元々
彼の物なのに、なんだかおかし
くて口元が緩んだ。手袋を外し
た白い手が几帳面に、丁寧に容
器の端を押して、クリームを掌
に出す。そしてなぜか、私の手
にせっせと塗り込め始めた。自
分で出来ると言っても、あっそ
う、とだけ。存外温かい手の感
触に、そっと目を伏せる。  

 ハンドクリーム / 瀬名泉 








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