あるものねだり / カリオストロ トリックオアトリート!常套句、もとい今夜限りの呪文を唱えると、分厚い本に落とされていた目が胡散臭そうに私を見た。 「そんだけあってまだ足りねえのか」 「ぶりっ子はもうおしまい?」 「あ?」 「いいえなんでも。ねえ、それよりお菓子は?」 「…はあ。菓子ならそこの…いや、そういや切らしてたな」 この俺様にいたずらできるなんざ光栄だなあ?にやにやしているのはお互い同じ。カリオストロが乗ってくれたから、プランAだ。丁寧に栞の挟まれた本を横目に、薄い桃色の頬に触れる。片膝を乗せると古びた椅子がぎしりと鳴った。さっきまでの悪い笑みは何処へやら、すっかり少女の顔になりすました彼の唇……ではなく、まるいおでこに、唇を押し当てる。 「は?」 「っ…ふふっ」 「…ガキみてえな真似しやがって」 「あ、もしかして照れてる?」 「うるせえぞ」 仕返しの常套句は投げやりで、用意しておいたお菓子も知らんふりをされて本の上。でも、これだって計画の内だもの。可愛いね。本音を半分混ぜた私の唇はきっと綺麗に笑ってる。
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